緊急事態解除 第2波への備えを着実に

西日本新聞 オピニオン面

 とりあえず当面の危機は乗り越えたと言うべきだろうか。ただ安心はもちろんできない。

 安倍晋三首相はきのう、首都圏1都3県と北海道で継続していた新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言を解除した。4月7日の福岡など7都府県への発令を皮切りに全国に対象が広がった同宣言は、47都道府県全てで解除された。

 解除の目安という数値を一部クリアしていない項目もあり、今回の政府判断には曖昧さが残る。とはいえ、事態が落ち着いてきたことは間違いない。

 九州をはじめ各地で、経済と暮らしに容易には回復できない負の影響が広がっている。マスク着用や対面での飲食を避けるといった「新しい生活様式」で感染を防ぎながら、学校などの社会活動や経済を段階的に動かしていくことは妥当だろう。

 緊急事態宣言の全面解除で、2月以降に本格化した感染拡大に伴う行政のコロナ対策も一つの節目である。これを機に、政府と自治体はこれまでの対応を総合的に検証し、感染再拡大に備える必要がある。とりわけ医療と検査の体制整備は依然として大きな課題だ。

 短時間で結果が判明する抗原検査も導入され始めたが、精度はそれほど高くはない。今後も主軸はPCR検査である。その能力は1日2万件を超えたとされるが、実際の検査数は遠く及ばない。検査の窓口となる保健所の要員も、検査に必要な人材も深刻な不足が続いている。

 医師が必要と判断した検査が速やかに実施できるよう、十分な手当てを急いでほしい。

 新たな問題も浮上している。感染患者を受け入れた医療機関は専門的対応などで重い負担を強いられてきた。経営悪化した病院も数多い。重症者向け病床使用率が下がった今こそ、感染第2波にも余裕を持って対応できる体制を整えるべきだ。

 政府は近くまとめる第2次補正予算案に、重点病院の支援や医療従事者への手当、院内感染対策の後押しなどを盛り込む方向だ。現場の声を重視したい。

 医療現場の人手不足も深刻化しており、日本看護協会は離職した看護師の復職を促す取り組みを始めた。各種人材に加え、防護服やマスクといった医療資材の備蓄も急ぐ必要がある。

 これまで少なからぬ医療従事者が感染におびえながら激務に耐えてきた。ピーク時には一部地域で医療崩壊に近い現場も見られた。あの危機状況に再び陥るわけにはいかない。

 約100年前のスペイン風邪は大きな第2波に見舞われた。今回も専門家が懸念している。第2波は遠からず到来するという前提で備えるべきだ。

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