「断腸の思い」JR日田彦山線のBRT案受け入れ 東峰村長、苦渋の決断

西日本新聞 総合面 横山 太郎

 一部区間の不通が続くJR日田彦山線について、福岡県の提案したバス高速輸送システム(BRT)による復旧を、同県東峰村の渋谷博昭村長が26日、正式に受け入れた。一貫して鉄道復旧を主張し、沿線関係自治体の中で孤立を深めるなど、険しい過程を経ての苦渋の決断。鉄道に近い形で残せることが背景にあるとみられるが、村内にBRT容認の声は小さく、村民の理解を得るには相当の困難も予想される。

 「次世代の子どもたちが、村で生まれて良かったと思える第一歩となるように、知事の提案を断腸の思いで受け入れたい」

 同日午後7時、村内で開かれた住民報告会。渋谷村長は用意した原稿に目を落としながら、村民に決断した理由を落ち着いた口調で説明した。しかし、質疑応答で話がJR九州や小川洋知事に及ぶと、語気を強め「経営優先というか、もうかり主義」「鉄道復旧への努力を感じなかった」などと批判。マスクで表情はよく分からなかったが、悔しさがうかがえた。一方、落胆する住民には「皆さんの活動がなければ、村の思いを踏みにじる形でJR案で押し切られていた」と何度も口にし理解を求めた。

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 「鉄道は災害で失われたもの。JRが原形復旧すべきだ」(渋谷村長)。当初、福岡、大分両県と沿線自治体の考えは一致していた。しかしJR九州は昨年1月中旬、鉄道復旧の条件として年1億6千万円の自治体負担を要求。「原理原則論」を主張する自治体と、「企業の論理」を前面に打ち出すJRとの交渉は手詰まりに陥った。

 九州豪雨から2年が過ぎ自治体間に「隙間風」が吹き始める。今年2月中旬に開かれたJRと沿線自治体のトップによる会議は、問題の長期化を受け、BRTを軸に検討することを確認。渋谷村長は孤立感を深めていった。

 5月初旬にあった超党派の福岡県議らでつくる「九州の自立を考える会」との会談。大分県日田市の原田啓介市長との意見交換を終えたばかりの自立の会から伝えられたのは、同市がBRT案を前提とした振興策を検討しているとの情報だった。鉄道復旧が困難であることを意味した。出席者の一人は「(渋谷村長らは)ショックを受けているようだった」と振り返る。

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 県が示したBRT案は村内のほぼ全ての区間が専用道となる。少なくとも村内は鉄道と同等の定時性が確保できるほか、日田彦山線の架橋の一つで村を代表する観光資源「めがね橋」の活用も可能となる。村議の一人は「ほかの道はなかったのが現実」と話す。

 この日、東峰村の住民団体「日田彦山線の完全復旧を求める会」は「残念でなりません。最後まで鉄道復旧の旗を降ろすことはできませんが、村の将来を考え総合的に判断した村長を信じ一任します」とのコメントを出した。村長を支持しつつも、納得できないもどかしさがにじむ。今後、村民の理解を得てBRTを活用した地域振興策を推し進めるには、村や福岡県など関係者の丁寧な説明が求められる。 (横山太郎)

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