中国・広州の路上にあふれる求職者…縫製の需要急減で

西日本新聞 国際面 川原田 健雄

 今月中旬、中小の縫製業者が集まる広東省広州市の鷺江地区。飲食店や衣料品店が並ぶ通りの両脇に多くの男女が座り込んでいた。足元には「お客を探しています」の看板。「シャツ、編み物、スーツ、何でも作ります」の文字も見える。

 「みんな湖北省からの出稼ぎだよ。縫製の仕事がないからこうやって注文を呼び掛けているんだ」。4月に湖北省から戻ったという中年の女性が明かした。

 中国政府は2月中旬、新型コロナウイルスの感染が最初に広がった湖北省を除く全土で、3月中旬には同省でも企業活動の再開を認め、経済の立て直しに力を入れてきた。しかし、世界的な感染拡大で米国などの需要が減少。中国の輸出が受ける打撃は深刻だ。1~3月期の国内総生産(GDP)は初めてマイナス成長を記録した。

 女性が勤める縫製工場も受注が大幅に減少。1着5、6元(75~90円)だった売り上げは「今は3元にも満たない。月収は半分以下に下がった」と声を落とす。

 街のあちこちにある掲示板はどれも「縫製工場、譲ります」などと書かれた張り紙で埋め尽くされていた。その一つに連絡すると、男性が「コロナの影響で湖北省出身の従業員が戻って来られず、経営に行き詰まった」と打ち明けた。「正直疲れた。もう何も考えたくない」。深いため息の後、電話は切れた。

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 中国経済の再生が進まない中、感染拡大が追い風となった業種もある。医療関連分野だ。

 「肺に異常な部分が見つかると、画面に表示が出て医師に知らせます」。北京の医療ベンチャー企業、推想科技(インファービジョン)の一室。コンピューター断層撮影装置(CT)で撮った肺の断面画像を示しながら、スタッフが自社の技術力を強調した。

 紹介されたのは、人工知能(AI)を使った新型コロナウイルス肺炎の診断支援システム。通常の肺炎を含む38万例の肺のCT画像をAIに学習させ、感染疑いの高い患者を検知する。一般的に放射線科医によるCT画像の診断は15~20分かかるとされるが、このシステムの導入で30秒から2分程度に短縮できるという。

 感染者が急増した際の医師の負担軽減や意思決定の迅速化につなげる狙いで、同社の陳寛・最高経営責任者(CEO)は「欧米や日本で既に導入が始まっている。中央アジア、アフリカにも進出したい」と意気込む。

 北京の医薬品メーカー聚協昌薬業は、新型コロナ感染者に解熱効果があったとされる漢方薬の売り込みに懸命だ。販路開拓を狙うのは、習近平指導部が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」の対象国。同社幹部は「3年以内に輸出を広げたい」と前のめりだ。

 習国家主席は3月、イタリア首相との電話会談で「健康シルクロード」構築を訴えた。詳細は不明だが、「一帯一路」で関係の深い欧州やアジア、アフリカ各国と衛生分野でも連携を深める狙いとみられる。

 漢方薬を含むバイオ薬品とハイテク医療機器は中国の産業政策「中国製造2025」の重点分野。コロナ禍を機に中国製品を浸透させ、世界の医療・福祉分野で主導権を握る-。官民一体の動きには、そんな思惑も透ける。 (広東省広州、北京で川原田健雄)

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