快適な暮らしのパートナー 存在感増すAI家電

 人工知能(AI)について考える企画「AIのある未来へ」。今月は家電にスポットを当てる。近年、AIの活用で家電製品が賢くなっているのをご存じだろうか? 庫内の食品の賞味期限を覚えてくれる冷蔵庫、暑いと感じる前に室温を下げてくれるエアコン。小さな悩みを解消し、快適な暮らしを提供してくれる「家電+AI」は、私たちの身の回りで存在感を増している。シャープのオーブンレンジ「ヘルシオ」と、パナソニックのロボット掃除機「ルーロ」を例に、AIが描く未来のライフスタイルに思いをはせた。

 ●「今晩の献立」提案 オーブンレンジ「ヘルシオ」(シャープ)

 シャープのオーブンレンジ「ヘルシオ」(AX-XW400、AW400)で使われるAIの働きを一言で説明するなら、「料理の相談相手」だろう。私たちが何百回となく繰り返してきた、「今晩の献立、何にしよう」との自問。その問いをヘルシオに投げ掛けると、「今日は暑くなりそう。スタミナがつくレバニラ炒めはどう」などとメニューを提案してくれるのだ。メニューが決まると調理に必要な材料をモニターに表示し、加熱温度や時間も自動で設定してくれる。「タケノコを使った料理は?」「カロリー控えめにしたい」などの相談にも乗ってくれる。

 ▼家庭の好み学ぶ

 「このオーブンは無線LANでインターネットに接続しています。音声認識機能を備え、言葉を解析して使う人のリクエストを理解し、クラウド(☆1)にあるデータベースから、メニューの提案などを行っています」。同社IoTクラウド事業部(大阪府八尾市)の中田尋経プロダクトマーケティング部長が説明する。AIもこのクラウド上にある。

 「その家庭はヘルシオでどんな調理をして、検索したのか、インターネットを介して収集したデータをAIは学習します。それを基に食材の旬や、ほかの家庭で作られている人気料理のランキングなどを加味して最適なメニューを提案しているのです」(中田部長)

 機械学習とは、コンピューターが膨大なデータから規則性や関連性を見つけ出し、判断や予測を行うAIの技術である。中田部長は「1週間ほど使い続ければ、その家庭の料理の傾向はおおよそつかめます。もちろん使えば使うほど学習して、より好みに合った料理をお薦めできるようになります」と話す。データの量が増えれば、判断や予測の精度が上がるのも機械学習の特徴だ。

 ▼“成長”人間のよう

 家電をはじめ、あらゆるモノをインターネットでつないで便利にする取り組みはIoTと呼ばれる。モノの利用状況や周辺環境がモニタリング(観察)でき、遠隔操作が可能となる。シャープはこのIoTとAIを組み合わせた「AIoT」を提唱している。ネットでのデータのやりとりに加え、AIによって学習し、成長するシステムの構築を目指すのだ。同社ではオーブンレンジのほか自動調理鍋、冷蔵庫やエアコン、加湿空気清浄器でもIoTを通して人の要望、要求を知り、AIによって最適な提案を行う家電製品を販売している。

 中田部長は「家電を単なる道具から、生活のパートナーに変えてゆくことを目指している」と話す。家電がAIによって賢くなる様子は、子どもの成長を見ているようでもある。音声に反応して相談に答えてくれると愛着も湧く。家電が人と同じように寄り添ってくれる日は、近いのかもしれない。

 ●けなげさに「愛着」 ロボット掃除機「ルーロ」(パナソニック)

 パナソニックのロボット掃除機「ルーロ」(MC-RS800)は、AIが部屋の間取りやごみの多い場所を学習して自動できれいにしてくれる。どこを集中的に掃除すればよいか考えながら動くので、AIを搭載しておらず決められた動きしかできないロボット掃除機と比べて、効率よくごみを吸い取れるのが特徴だ。

 ルーロは無線LANでインターネットとつながり、クラウドにあるサーバー(☆2)に情報を送っている。情報を検知するのは本体のセンサーだ。上面にあるカメラセンサーは部屋の形状や、ベッドや机はどこにあるかなどを把握する。AIはデータを分析し、マッピング(地図作り)もする。

 ▼ルート“考え”自走

 「同時にカメラセンサーがドアの端や天井の四隅など、部屋の特徴点を検出します。そこから距離を割り出すことで、ルーロは自分が部屋のどこにいるのかを認識できます。マッピングと自己位置認識を併せることで、掃除するルートを考えて自走するのです」。パナソニック・アプライアンス社(滋賀県東近江市)のランドリー・クリーナー事業部制御技術部の福嶋雅一係長が説明する。センサーとAIの組み合わせで、ルーロは「地図」を見ながら「目的地」を目指し、「任務」を果たすのだ。

 ルーロは赤外線、超音波、レーザーのセンサーも搭載している。これらのセンサーでさまざまな障害物を検知して避け、壁や家具にぎりぎりまで近づいて掃除することができる。ごみがどこに分布しているのか、部屋の地図上に「ゴミマップ」を作ることもできる。ごみがたまりやすい場所のみ素早く掃除するモードも備えている。部屋を掃除するたびにデータを集め、学習して判断し、予測するのはAIの得意分野だ。

 ▼名前つける人も

 同事業部の川島抽里(ゆり)クリーナー商品企画課主務によると、ルーロを使っている人の多くが、共働きなどで「掃除する時間がない」と感じているという。ルーロは職場や外出先からスマートフォンで操作でき、どこを掃除したのか「ゴミマップ」を見て確認することができる。「ロボットとはいえ相手は掃除機。スマホを見れば、ちゃんと掃除したことが分かって安心できる」と川島主務。自身も家で使っているが、「ルーロが掃除をしやすいように、努めて床の上にあるものを片付けるようになった」と笑う。

 冷蔵庫やオーブンなどAIと連携した家電は多いが、自分で動き回れるのは掃除機くらい。あっちへこっちへ移動して懸命に掃除するルーロを見て、愛着を覚える人もいるという。「けなげに働いている姿に心動かされるのでしょう。名前をつけている人もいます」と川島主務。友達のように、ペットのように接したくなるのが、未来の家電なのかもしれない。

 (塩田芳久)

 ●注釈
 ☆1 クラウドコンピューティングの略。インターネットなどを経由し、ソフトウエアやデータベースを呼び出して利用するコンピューターの活用法。クラウドは雲の意味。
 ☆2 インターネットを通じて、ほかのコンピューターに情報やサービスを提供するコンピューターのこと。サーバーは仕える人などの意味がある。

=2018/06/24付 西日本新聞朝刊=

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