利用低迷を鮮明に 合理化への布石か、JR九州の17線区赤字公表

西日本新聞 総合面 布谷 真基

 JR九州が公表した線区別収支は、利用が低迷するローカル線の苦境をはっきりと印象づけた。人口減少や少子高齢化が進む中、収支改善は容易ではない。鉄道事業の効率化が長年の経営課題となっているJR九州は、赤字額をさらけ出すことで鉄道維持に向け沿線自治体との議論の糸口にしたいとするが、将来的なバスなど他の交通手段への転換も排除しない思惑も透ける。

 「地元と一緒になってどう維持していくか知恵を出していきたい」。青柳俊彦社長は27日の記者会見で繰り返し強調した。

 JR九州の鉄道事業を取り巻く環境は厳しい。1987年の発足以来、赤字が続き、2016年の株式上場を機に、鉄道事業資産の減損処理などに踏み切り黒字化したものの、足元では新型コロナウイルスの感染拡大で鉄道利用が激減。コロナ禍が収束しても、観光や日常的な利用がどれだけ回復するかは見通せない。

 これまでも駅の無人化などを進め、18年春のダイヤ改正では過去最大の117本の減便に踏み切り、沿線住民の批判を集めた。

 17年7月の九州豪雨で被災し、一部区間で不通が続く日田彦山線の復旧を巡っては、鉄道復旧の条件として年1億6千万円の支援金を沿線自治体に要求。協議が難航した末に、バス高速輸送システム(BRT)への転換で決着した。

 九州と同様に多くの不採算路線を抱えるJR北海道は、1日1キロ当たりの平均通過人員(輸送密度)が2千人未満の線区を「会社単独では維持困難」と位置づけ、廃線やバス転換に至った線区もあった。JR四国も鉄道施設を沿線自治体などが保有する「上下分離方式」導入の是非を含め、協議を進めている。

 JR九州は今回の収支公表を機に、地元自治体との議論を深める方針。公表対象となった20線区のうち、7線区の沿線自治体では、九州運輸局や県を交えた検討会を立ち上げ、利用促進策の検討を始めている。

 会見で青柳社長は、対象線区の将来的な鉄道以外への転換の可能性を問われ、「それを前提とした考えは持っていない」としつつも、「地元と議論した結果としてはあるかもしれない」と含みを持たせた。

 多様な交通手段を情報技術(IT)で統合する「MaaS(マース)」などを挙げ、「イノベーションの中で考えないとネットワークを維持できない」とも強調。鉄道によるローカル線網維持が「聖域」ではなくなっていることを印象づけた。 (布谷真基)

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ