特別支援学校もオンライン授業 「仕掛け人」に聞く可能性

西日本新聞 くらし面 三宅 大介

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、注目が高まった情報通信技術(ICT)を活用するオンライン授業。肢体の不自由な児童生徒が通う福岡市立今津特別支援学校(西区)では4~5月、視聴する側もリアルタイムで発信できる「同時双方向型」の配信を行い、子どもたちを喜ばせた。その狙いや課題、可能性とは-。ICTに詳しく、授業の「仕掛け人」となった同校教員の福島勇さん(59)に聞いた。

 毎回、授業は出席確認からスタート。子どもたちは一人ずつ名前を呼ばれ、画面いっぱいに顔が大写しに。それぞれ発声や挙手、表情の変化で返事をした。表現が周りに伝わりにくい子は、名前や「はーい」など、あらかじめ保護者に書いて準備してもらっていたプラカードを掲げた。

自覚や自信になる

 「一方通行で知識を教えるだけでは意味がない」と福島さん。特別支援学校には元々、体調が変わりやすく日常的な通学が難しい子どももいる。「自分も発信してやりとりすることで、学校の一員としての自覚や自信につながるんです」

 1回の配信は約30分。音楽の授業では教職員有志のバンドが「きらきら星」を演奏し、子どもも保護者も一緒に手持ちの楽器を鳴らし、歌い、体を揺らした。美術では「色相の違いを学ぼう」と、季節のさまざまな「緑」を家の中で探すようお題が出され、野菜や植物、ぬいぐるみなどを一人一人が持ち寄り、画面に映し出して記念撮影した。

 週2回のペースで配信は全校向けに計7回、中学部、高等部向けに計2回に及び、全校向けはほぼ児童生徒の過半数が“出席”。「親子で参加し、30分があっという間」「子どもが毎回楽しみにしている」「もっと回数も増やして」-と保護者の反応も上々だった。

合理的配慮の一つ

 福島さんは同校で、担任を持たない「支援専科」を担当。ICTを活用した特別支援教育や自立活動に20年以上携わり、そのノウハウを伝える講演会も全国各地で行っている。

 コロナ禍で全国の学校が臨時休業となった3月初旬の時点で、「学習保障の一環」として、それまで誰も経験がなかったオンライン授業の必要性を強く感じた。学校に行きたくても行けない子どもが自宅でも授業が受けられるよう環境を整備することは「(法的に義務付けられた障害児への)合理的配慮の一つ」と、常々考えていたからだ。

 年度末で異動時期が重なり、学校長も交代。4月以降は教員も在宅勤務を求められるなど制約がある中、福島さんは、懸命に校内の調整を急いだ。不慣れな教職員向けに同時双方向型でオンライン授業が可能な「Zoom」ソフトや機器類の講習を実施。「複数の若手教員が意欲的で、率先して準備してくれたのが大きかった」と振り返る。

 保護者向けには、家庭の端末でオンライン授業に参加する方法を、動画投稿サイトユーチューブ」に個人として投稿。福島さんは2017~18年度、同校の保護者向けにもICT講座を開いており、機器の活用に理解のある親たちが少なくなかったとみられる。

 授業の様子は、複数の特別支援学校や小学校からも教職員が見学に訪れた。

手段も選べるよう

 緊急事態宣言が解除されて登校が可能となり、同校のオンライン授業は5月20日で一区切りとなった。だが福島さんは「特別支援教育では特に、子どもが苦手で困難なことを代替できるICTの活用は不可欠」と指摘。「いつでもオンライン授業に切り替えられるよう、準備しておくことが望ましい」と力を込める。

 現状では、教育委員会がセキュリティーを重視して独自に構築しているネットワークは使い勝手に制限や弱点があるほか、家庭でICT端末を持たない児童生徒への普及策など、ハード面の課題は大きい。ただ文部科学省はICT教育を推進するため各校への高速大容量ネットワークなどの整備を急いでおり「各学校単位でやる気になれば、充実していくことは難しくない」(福島さん)状況だ。

 コロナ禍の終息はなお見通せず、登校に二の足を踏む障害児や親も少なくない。登校が難しければ、オンラインでも-。授業を受ける「手段」も選択できるような配慮を求めるニーズは、ますます高まっていくに違いない。 (編集委員・三宅大介)

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