水俣病、30年余の症状変化実態を提示 熊本学園大研究員が出版

西日本新聞 熊本版 村田 直隆

 熊本学園大水俣学研究センターの井上ゆかり研究員(46)が、不知火海に面する熊本県芦北町女島に暮らす人々への調査を通して、水俣病の実態を提示した書籍「生き続ける水俣病-漁村の社会学・医学的実証研究」を出版した。漁村生活の歴史考察に加え、30年以上経過後の症状の変化に着目。被害実態に即していない行政の患者認定制度の見直しを求めている。

 同センターが実践する「水俣学」は、専門の枠を超えて多角的に水俣病を検証する学問として、研究の第一人者である故原田正純医師が提唱した。井上さんは、センター設立15周年の節目に「一つの学問的方法の到達点を示し世に問いたい」と、2016年度に提出した博士論文に加筆して本にまとめた。

 著書では、水俣病の実態に迫る手法として、漁民への聞き取りや関連資料を通し、漁業形態の変遷や食生活、水俣病発生当時の認識などを社会学的に考察。その上で原田医師と同センター顧問の下地明友医師の協力を受け、11、12年に女島の住民46人に実施した医学的調査の結果を取り上げた。

 この調査では、1976年に原田氏ら民間医師団による検診を受けた認定患者ら11人について、30年以上にわたる神経症状の変化を分析。その中で95年の政治救済を受けた6人は、両手足先の感覚障害や視野狭窄(きょうさく)など症状が悪化した項目が多かった。このうち、76年調査で「水俣病の疑い」とされた2人は、「水俣病」と診断されたという。

 いまだに多くの人が患者認定申請をする現状を踏まえ、井上さんは「加齢による症状の悪化を、国や県は他疾患の可能性としていくつも列挙するが、不知火海沿岸の健康調査をしておらず、患者たちの人権の否定と言わざるを得ない」と指摘。その上で「水俣病を症状だけで見るのではなく、患者の暮らしも含めて判断し、実態に見合った認定基準に変えるべきだ」と提言する。(村田直隆)

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