米コロナ死者10万人超 トランプ氏、再選狙い対中責任転嫁に躍起

西日本新聞 国際面 田中 伸幸

 【ワシントン田中伸幸】新型コロナウイルス感染による米国の死者が27日、10万人を超えた。トランプ大統領は感染拡大阻止対応の結果「多くの命を救った」と強調するが、対応が早ければ死者数を大幅に抑えられたとの指摘が上がるなど批判はやまない。11月の大統領選まで5カ月余り。トランプ氏は再選戦略として中国に責任転嫁する姿勢を強め、悪化した経済の再生を急いで成果を示そうと躍起だが、思惑通りに事を運べるか、見方は割れる。

 「迅速な対応がなかったら、死者は25倍にも達していただろう」。トランプ氏は死者10万人到達が目前に迫った26日、世界で最初に感染が拡大した中国からの入国禁止措置を1月末に打ち出したことを改めて強調。「無対策なら最大で死者200万人超」との推計を念頭に、犠牲を大幅に抑え込んだと自負してみせた。

 だが、トランプ氏が国民に外出自粛などの行動制限を求めたのは3月中旬。制限を1~2週間早めていれば3万~5万人の死亡が避けられたとの推計もある。3月末に、死者を10万人以下にとどめれば「良くやったと言えるのでは」と言及していたが、今後さらに数万人増えるとみられる。

 大統領選で野党民主党の候補指名が確実なバイデン前副大統領は、対応を誇示するトランプ氏に対し「10万人が死亡し、4千万人が失業したのは悲劇だ」などと痛烈に批判。大統領選で責任を厳しく問う構えだ。

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 批判の矛先をそらしたいトランプ氏は、バイデン氏への個人攻撃を強める一方、コロナ対応を巡り米世論が不信感を募らせる中国への強硬姿勢を先鋭化。26日には、香港への国家安全法制導入の動きを受け「数日内に非常に強力な措置を取ろうとしている」と述べ、対中制裁の現実味が増す。

 しかし、経済界からは米中摩擦の再燃や激化は経済再生の障壁になるとの懸念が強い。一方で、トランプ氏が声高に主張する中国依存型のサプライチェーン(部品の調達・供給網)見直しについては「米企業が長年かけて構築した効率的な供給網を変える動きは乏しい」(日系企業駐在員)と冷めた見方が広がる。

 トランプ氏寄りのFOXニュースの世論調査では、トランプ氏の対中政策の信用度はバイデン氏より低いとの結果もあり、強硬論一辺倒には疑問符が付く。

 年末に向け経済が復調すると言い張るトランプ氏が各州知事に圧力をかけ、営業規制などの緩和を急がせる姿勢にも、感染再拡大の観点から不安が尽きない。米政府内には失業率が10%を上回る厳しい情勢が大統領選まで続くとの見方があり「経済のV字回復は期待できない」(日米外交筋)との意見が支配的だ。

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 ただ、感染拡大の第2波を当面回避できれば、経済が徐々に好転する公算は大きい。1~3月期にマイナスに陥った実質国内総生産(GDP)成長率は、7~9月期にはプラスに転じる可能性がある。そのデータは大統領選投票日の直前に公表予定で、プラスならトランプ氏にとって強力な追い風となり得る。

 死者や感染者の多くは高齢者層で、トランプ氏の支持者が少なくない。それだけに「再選に向けて不利」(識者)との指摘がある半面、民主党が地盤とする地域に比べトランプ氏の地盤では犠牲者が少なく、打撃は限定的との分析もある。

 未曽有の危機下で逆風にさらされても、保守層の支持は依然、底堅い。南部バージニア州の初老の男性は「大統領はできることをすべてやっている」と対応遅れの批判を一蹴し、選挙への影響を強く否定した。

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