香港民主派封じへ力業 中国安全法制導入 米との「新冷戦」激化へ

西日本新聞 総合面 川原田 健雄 田中 伸幸

 【北京・川原田健雄、ワシントン田中伸幸】中国が香港への国家安全法制導入を決めた。昨年以降、香港の民主派は国際世論を喚起して対中圧力を強めており、今回の決定には米国などの介入を防ぎたい習近平指導部の思惑がにじむ。対中強硬姿勢を貫くトランプ米政権は制裁措置をちらつかせており、米中の「新冷戦」はさらに激化しそうだ。

 「賛成2878票、反対1票」。国家安全法制議案の採決結果が掲示されると、北京の人民大会堂はどよめきが起き、しばらく拍手が鳴りやまなかった。

 今回、唐突に浮上した印象の国家安全法制だが、習指導部は7カ月前から導入へ動きだしていた。昨年10月下旬に開いた中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第4回総会(4中総会)で「香港の国家安全を守る法制度と執行メカニズムを確立する」と決定。今年に入って中国政府で香港問題を担当する「香港マカオ事務弁公室」のトップに習氏側近の夏宝竜氏を起用し、習氏の指示が直接伝わる体制を整えて周到に準備を進めてきた。

 習指導部が導入を急いだのは9月に香港立法会(議会)選挙が迫るからだ。民主派が圧勝した昨年11月の区議会選挙と同じ結果を招かないように、8月には国家安全法を施行して民主派をけん制したい構えだ。政府を批判する民主派候補を国家分裂行為などで摘発し、立候補や当選を無効にするとの見方が出ている。

 国際社会の動きも導入に拍車を掛けた。香港で抗議活動が相次いだ昨年、民主派の元学生団体リーダー黄之鋒氏らは欧米諸国を訪れ、中国への圧力強化を直接呼び掛けた。そのかいあって米国では「香港人権・民主主義法」が成立。香港で一国二制度が維持されているかを毎年検証し、状況次第で中国当局者への制裁が可能となった。

 王毅国務委員兼外相は24日の記者会見で「香港に外部勢力が深く干渉し、国家の安全に重大な危害を加えている」と指摘。国家安全法制には「外国勢力の干渉」を排除することが盛り込まれており、民主派と国際社会を寸断する狙いがあるのは明らかだ。

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 今回の決定に西側諸国や台湾は中国への懸念を相次いで表明した。特に厳しい姿勢を見せるのが米国だ。

 28日には、英国などと4カ国の連名で「この法制は一国二制度の枠組みを弱体化させ、香港市民の人権保護の侵害につながるだろう」との声明を出した。米政府は香港人権法に基づき、米国が香港に認めてきた関税やビザ(査証)発給などの優遇措置を見直すか検討する。米政権内では、香港の人権侵害に関わった中国当局者への資産凍結やビザ取り消しなどの制裁案も浮上している。

 トランプ氏は11月に大統領選を控えており、人権という賛同を得やすい大義を旗印に中国へ攻勢を掛け「強いリーダー」を演出する狙いも透けて見える。

 ただ、メンツを重んじる習指導部が妥協する可能性は低い。共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)は「米国は新型コロナの影響で外国に干渉する能力が弱まっている」と指摘。貿易協議で一時休戦した米国との対立激化も辞さない構えだ。

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