金髪の悪役レスラー「上田馬之助」(2011年没)…

西日本新聞 オピニオン面

 金髪の悪役レスラー「上田馬之助」(2011年没)。凶器攻撃など卑怯(ひきょう)な反則で相手を痛めつけた。徹底した無法ぶりにファンは興奮。プロレス人気を大いに盛り上げた

▼実家にまで誹謗(ひぼう)中傷の電話が相次ぐほど憎まれた悪役は、実は生真面目で心優しい男だった。観客席で暴れる相棒レスラーの前に立ちふさがったことがある。背後にはすくんで動けない年配の女性。悪役は叫んだ。「おばちゃん!どきやがれ!早く逃げろ!危ないよ!」

▼親戚の子から「おじちゃん来ないで」と言われた時は「つらかった」とも。1996年、交通事故で瀕死(ひんし)の重傷を負い、悪役はリングを去った

▼車椅子の生活になった上田さんは、交通事故の撲滅を訴え、同じ境遇の人を励ますために各地を回った。ある講演会でののしられた。「悪いことばかりしたからそんなふうになったんだ」

▼暴言に傷つく一方、うれしくもあったという。自分を本当の悪人と思い込むほど真剣にプロレスを見てくれていた-。「プロの悪役」を全うしたという誇りだった

▼22歳の女子プロレスラーが亡くなった。自殺とみられる。テレビ番組での言動がネット上で誹謗中傷されていた。リングでは悪役を演じていた。リングの外でもイメージを大切にするプロ意識が反感を買ったのだとしたら、やるせない。正しいという思い込みで研がれた言葉のナイフは、悪役の凶器より人を深く傷つける。

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