「コロナと闘わず共存を」 差別や行動制限「心の持ちよう」説く住職

西日本新聞 長崎・佐世保版 宮崎 省三

 長崎県佐世保市中里町にある真言宗の東漸(とうぜん)寺は、病気に苦しむ人々を救うとされる薬師如来を本尊とする。本堂に新型コロナウイルス感染症で亡くなった人を供養する卒塔婆を立てた奥島正就(せいしゅう)住職(56)は、コロナと向き合う心の持ちようを説く。

 薬師如来は聖徳太子が仏教による国づくりを進めた飛鳥時代以降、国を守るシンボルとして各地に祭られた。「薬師如来が国づくりの根本となったのは、古くから人々が病と闘ってきた証し」と奥島住職。東漸寺は現在の佐世保市相浦、中里地区一帯を守る寺として986年に創建された。

 奥島住職は言う。

 「人や動物、ウイルスなど、万物の個を尊重し合うことで秩序が保たれる。自然を破壊して開発を進めるなど、人間は個をおろそかにしてきた」

 「新型コロナという個を知り尽くすために、みんなが努力、協力し、ウイルスと闘うのではなく、どう共存するかを考えてほしい」 約1500年前にインドで説かれた薬師経も病との共存を諭しているという。

 新型コロナを巡り、差別や偏見も顕在化している。「大勢で怒ったり、誰かが悪いと責めたりしても苦しみが助長される」。行動の制限も「本当に必要なものは何かを考える契機としたい」と前向きに捉える。檀家(だんか)には心を落ち着かせてもらおうと、般若心経の写経を勧め、寄せられた約100枚を奉納した。

 地域のお年寄りは「戦争の時より気持ち悪い」「怖くてたまらない」と口々に話す。戦争体験のない奥島住職は、その言葉に不安を覚える。

 「終戦後に日本人の心が傷ついたように、コロナが終息しても、世の中のしこりは当分取れないのかもしれない」。先の読めない日々、薬師如来に手を合わせ安寧を願う。(宮崎省三)

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