「お年寄りに元気を」酒場店主が弾き語り動画 介護施設訪問代わりに

西日本新聞 佐賀版 津留 恒星

 新型コロナウイルスの感染防止のため自宅で過ごすお年寄りの心を癒やそうと、佐賀県唐津市中町で音楽酒場「明日があるさ」を営む苣木(ちさき)孝文さん(62)が、ギターで弾き語りをする動画を配信している。介護施設などを回って歌を披露するボランティア活動ができなくなり、いつでも視聴できる動画で音楽と笑顔を届けようと考えた。コロナ禍で自身の店も打撃を受ける中、「今できることでお年寄りたちに元気を与えたい」とギターを弾く。

 苣木さんは同市出身。元々歌や音楽が好きでギター教室に通っていたこともあり、55歳で地元の広告会社を辞めてカラオケや演奏楽器を備えた酒場「明日があるさ」を開いた。その名に「つらくても頑張ろう」というメッセージを込めた。

 弾き語りを始めたのは4年前。ボランティアに励む人たちに尊敬の念を抱いていたこともあり、「自分にできることで人を喜ばせたい」と思い立った。市内の介護施設を回り、クリスマス会などに参加した。

 ギターを奏で、歌声を響かせれば、お年寄りたちがニコニコした表情で手拍子をしてくれたり、ベッド上で体を起こして耳を傾けてくれたりする。「楽しませるはずのこっちが元気をもらうんです」。苣木さんは笑う。

 だが、新型コロナの影響で、昨年12月に行った46回目を最後に活動が止まった。施設で面会禁止の動きが広がる中、できることを模索し、芸能人や音楽家が動画を通じて視聴者を元気づけている取り組みに着目。休業中の店内で自らを撮影し、4月中旬に動画投稿サイトユーチューブ」で配信を始めた。

 美空ひばりの「真赤な太陽」や滝廉太郎作曲の「花」など昔ながらの曲が中心で、演歌や歌謡曲、フォークソングとジャンルはさまざま。これまで13動画を投稿したが、最後に必ず水前寺清子のヒット曲「三百六十五歩のマーチ」を歌う。前向きな気持ちになってほしいとの思いからだ。

 ボランティアで訪問した施設などに動画配信を伝えると、唐津市や鹿島市の施設から「みんなで見ています」などとメールや手紙が寄せられた。今月29日、唐津市北波多の老人ホームで動画を視聴した進藤タエ子さん(87)は「昔を思い出す曲で心が弾みます。また苣木さんに会える日が楽しみ」と笑顔を見せた。

 苣木さんはすでに店を再開したが、動画の投稿は続ける考えだ。唐津城やバラ園など屋外でも撮影し、唐津の風景も楽しんでもらう構想を描く。「人生、こんな大変なときもあると思う。でもこんなときだからこそ、みんなで一緒に明るい気持ちになれたらうれしい」(津留恒星)

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