聴覚に障害のある「僕」は読唇術と相手の表情から言葉を読み取って会話している…

西日本新聞 オピニオン面

 聴覚に障害のある「僕」は読唇術と相手の表情から言葉を読み取って会話している。コンビニで店員にこう頼んだ。「僕は耳が聞こえません。マスクを外してもらえますか」

▼すると店員は僕の耳を指さし一方的に何かしゃべり始めた。マスクは一向に外さない。憤慨して店を出ると、追い掛けてきた。どうやらもう店に来ないように、と言っているようだ

▼2年前に本紙くらし面に掲載された漫画エッセー「僕は目で音を聴く」の一こま。作者は平本龍之介さん。コンビニ本社に苦情のメールを送り、理不尽な応対の理由が分かった。平本さんの両耳の補聴器を、店員はイヤホンと思い込んでいたのだ

▼発したのはこんな言葉か。「マスクを外せと言う前に自分がイヤホンを外すべきだ」。無知といえばそれまでだが、補聴器はお年寄りだけの道具ではない。平本さんが味わった疎外感はいかばかりか

▼コロナ禍が始まった頃、国や自治体の会見で手話通訳者がマスクを着けていることに聴覚障害者から「唇が読めない」と困惑の声が上がった。これを受けて通訳者だけマスクを外し、前に透明のボードを設置する自治体も。こうした細やかな心配りはうれしくなる

▼ただ、街行く人が皆口元を覆う今、聴覚障害者ならずともコミュニケーションは取りづらい。見えない障害や相手の感情に、もう一歩踏み込んだ理解と配慮を。これもウィズコロナの教訓だろう。

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