米国、危うい責任転嫁 香港の優遇廃止 経済制裁に限界も

西日本新聞 総合面 田中 伸幸 川原田 健雄

 【ワシントン田中伸幸】トランプ米大統領が、香港に対して認めてきた優遇措置の見直し着手など、中国への強硬姿勢を一段と鮮明に打ち出した。中国の反発は必至だが、新型コロナウイルスの感染拡大を巡って高まる世論の反中感情もあり、圧力を弱める気配はない。だが、11月の大統領選での再選には、コロナ禍で急激に落ち込んだ経済の立て直しが不可欠。大規模な対中経済制裁に踏み込めば再生への支障になりかねず、限界も透ける。

 「香港はもはや高度の自治を維持しているとは言えない。『一国一制度』だ」。29日に記者会見したトランプ氏は、香港に対する国家安全法制の導入を決めた中国が「一国二制度」の枠組みを破ったと非難。新型コロナに関して、中国側が嫌う「武漢ウイルス」との表現をあえて用い「中国の隠蔽(いんぺい)によって世界的な大流行を引き起こした」と改めて糾弾するなど、中国批判の言葉をまくし立てた。

 「中国のかいらい」とみなす世界保健機関(WHO)との関係断絶を含め、中国への対抗心をあらわにする背景には大統領選がある。

 政権奪還を目指す野党民主党からコロナ対応の遅れを追及されるトランプ氏は、中国に責任を押しつけて批判をかわし、選挙への影響を最小限にとどめようと必死。民主党候補に選ばれる見通しのバイデン前副大統領に対し「オバマ政権時代、中国に弱腰だった」との批判を繰り返しており、自ら厳しい姿勢を示してアピールしたい思惑もある。

 ただ、中国批判の言葉は躍るものの、対抗措置をどこまで具体化させるのか、本気度は未知数だ。会見で表明した香港に対する優遇措置撤廃について、実施時期など詳細の明示はなく、一部でささやかれていた米中貿易協議の合意第1弾見直しの言及もなかった。

 コロナ禍で失業率が急激に悪化するなど深刻な経済情勢が改善しなければ、再選は険しい-。米国内でこんな見方が広がる中、トランプ氏が新たな追加関税措置も含む対中経済制裁を大々的に打ち出せば、中国の反発は確実だ。米中間で合意した米農産品の輸入増を拒むような事態を招けば、経済再生や選挙への逆風となりかねず、制裁の具体化は容易ではない。「経済に影響が出ないような配慮がうかがえる」。CNBCテレビは、トランプ氏の強硬姿勢をこう分析した。

 「中国は知的財産を盗んだ」などと相手国を敵視し、圧力を強めて譲歩を引き出そうとするのがトランプ氏の戦略。だが、米中貿易協議では米側が強く望んだ中国の構造改革は先送りになるなど、高圧的な手法は必ずしも奏功していない。

 保守派の論客からは、トランプ氏の対応に評価が上がる半面、対中圧力が表面的なものに終わらないよう「対策を講じ続ける必要がある」(元ホワイトハウス高官)との注文がついた。

 

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