「ついて行けない」次々に制度改正…“命綱”の雇用助成金、申請に壁

西日本新聞 一面 中島 邦之

 新型コロナウイルスの影響で業績悪化した企業にとって、雇用を守る命綱ともいえる「雇用調整助成金」。やむを得ず休ませた従業員に払う休業手当の一部を国が肩代わりする仕組みだが、コロナ禍の拡大に伴って国が次々に制度改正を重ねたことで制度がさらに分かりにくくなり、多くの事業者が申請手続きに難渋している。売り上げ減で窮地に立つ事業者からは「見直し内容の周知も十分ではなく、サポートがなければ申請を諦めざるを得ない」との声も聞かれる。

 福岡市でイベント会社を営む水上徹也社長(62)も申請書類作りに苦労した一人。企画・制作を担う音楽公演や落語会などが中止に追い込まれ、月額300万円ほどの売り上げは3月以降ほぼゼロに。「終息後の事業再開を決意し」、休ませた従業員2人に賃金の100%の休業手当を払い、4月半ばから雇調金の申請手続きを進める。

 だが、当初6種類だった申請書類の作成は「素人が自力でやるのは困難だった」と水上社長。税理士や知人の社会保険労務士に助言を求め、5月7日に一応完成させた。ただ、雇調金の上限額引き上げのニュースが流れたため、労働局にはまだ提出していない。

 この間、中小企業助成率の9割から最大10割への拡充が同1日に発表され、同19日には小規模事業主(従業員おおむね20人以下や個人事業主)の申請手続きが簡略化。それでも申請書類3種類と添付書類4種類が必要。水上社長は「制度がどんどん変わり、ついて行けない」。特に何度も拡充される助成率については、自分がどの条件に該当するのか混乱したという。

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 こうした声は少なくない。福岡県内の約2200社が加盟する同県中小企業家同友会の川畑義行専務理事は「難しい書類をそろえるだけで何週間もかかり、結局、申請を諦めたという声を聞く。苦い体験をした人は、制度が簡略化したといっても簡単に再チャレンジはできない」と語る。

 自力での申請が難しい事業主の助っ人として、国が期待するのが制度に詳しい社労士による申請手続きの代行。だが、不正受給があれば連帯責任を問われる規定がネックになっている。顧問先の申請を代行した同県の篠崎隆一社労士は「日頃付き合いのない新規の企業は経営実態が分からず、リスクがある。依頼されても二の足を踏む社労士が多い」と打ち明ける。

 では、どうすれば良いのか。川畑氏も篠崎氏も、申請手続きのさらなる簡略化やサポート強化の必要性を提案する。「まずはスピード優先で支給し、不正があれば後でペナルティーを科せばいい。社労士が関与しやすい仕組みにしないと、業績が日々悪化する事業主には手遅れになりかねない」 (中島邦之)

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