法務行政の刷新 検察の体質改善も必要だ

西日本新聞 オピニオン面

 何をどう反省し、組織をいかに立て直すのか。政府の問題認識が判然としない。もし事実関係を曖昧にしたまま幕引きを急ぐ狙いなら、国民の不信感はむしろ増すばかりだ。

 東京高検検事長だった黒川弘務氏が賭けマージャン問題で辞職したことなどを受け、森雅子法相が「法務・検察行政刷新会議」(仮称)設置の方針を明らかにした。国民の信頼回復に向けた取り組みだという。ところが肝心の会議のテーマやメンバーは検討中とされ、いかにも急ごしらえの印象が拭えない。

 黒川氏を巡っては、異例の定年延長に加え、賭けマージャンに対する処分が法務省の内規による訓告にとどまったことへの批判が噴出している。人事院の懲戒に関する指針では「賭博は減給または戒告、常習賭博は停職」とされているからだ。

 森法相は、黒川氏のこれまでの功績を考慮した法務省の処分案を内閣が承認した、としている。しかし、定年延長も含め、内情は首相官邸サイドの意向が強く働いたとみられ、法相の説明は二転三転している。

 マージャンに関する法務省の調査は1日で終わり、賭博罪での立件はあっさり見送られた。弁護士グループや市民団体は黒川氏とマージャンに加わった朝日、産経両新聞社の社員、記者を刑事告発している。

 野党も、事実関係が不透明であり処分の妥当性に疑義があるとして、国会での徹底審議を求めている。当然ではないか。

 他方、検察組織の体質も気掛かりである。そもそも、中枢ポストにいた黒川氏が政権に近いと目されていたこと自体、由々しき問題だろう。検察庁法にはない定年延長や、身内に甘いと批判されても仕方がない訓告処分が結果としてまかり通ったことは、それを許す素地があったことの裏返しと言える。

 検察のトップである稲田伸夫検事総長が、国民に説明や謝罪を行う記者会見を開いていないのも残念だ。検察は10年前、大阪地検特捜部による証拠改ざん事件で国民の信頼を失い、出直しを迫られた。現在でも刑事裁判の証拠開示に消極的で、不起訴にした事件の理由を説明しないケースが目立つなど独善的な姿勢が問題視されている。

 黒川氏の賭けマージャンに関しては、検察官の綱紀粛正を促せば済む話だ。刷新会議を立ち上げるのであれば、検察の独立性が揺らいだ経緯もつぶさに検証し、組織体質や捜査の在り方にも踏み込んだ議論が必要だ。検察を所管する法相の資質や内閣との距離感も問われている。

 「刷新」の掛け声が、法務行政への批判をかわす「目くらまし」であってはならない。

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