亡き夫に見せたい50周年 北九州の弁当店 あと2年「火は消さない」

西日本新聞 北九州版 米村 勇飛

 「夫が生きていたら叱咤(しった)してくれるはず」。北九州市若松区二島で久保田京子さん(75)が経営する弁当店「味のくぼた」はあと2年で開店50周年を迎える。低価格、家庭的な味で地域の人たちの胃袋をつかんできた。二人三脚で店を担ってきた夫は1年半前に他界。悲しみが癒える間もなく、新型コロナウイルスに見舞われ、売り上げは半減した。久保田さんは「50周年を迎えた店を夫に見てもらいたい」という一心で今日も店に立ち続けている。

 開店したのは1972年11月23日。「真面目にコツコツと働いていきたい」という夫の三男さん(享年79)の意向で「勤労感謝の日」にオープンした。

 焼きサバやほうれん草のおひたしなど家庭的な総菜が豊富で、おかずが盛りだくさんの日替わり弁当は特に人気。若松以外の北九州市内からも配達の注文が少なくなかったという。

 子どもがいない2人にとって、店はかわいいわが子のような存在。夫婦と従業員7、8人で店をやりくりしてきた。長く経営は順調だったが、2018年10月、三男さんは胃や肺などを患い、亡くなった。結婚記念日前日だった。

 新型コロナの影響で3月末以降は売り上げの約7割を占めるイベントや集会、会社への配達がほとんどキャンセルになり、店頭での売り上げも大幅に減少。4月の売り上げは例年の約半分になった。現在は国の持続化給付金を申請しているという。

 三男さんが亡くなる1年ほど前、京子さんがふと「店をやるのが疲れた」とこぼすと、三男さんは「俺1人でもやる」と言い切った。その言葉は今も忘れられない。「夫がいない悲しみも、新型コロナのつらさもあるが、体が動く限りは店の火を消さない」。京子さんは目を赤くしながら、言葉に力を込めた。 (米村勇飛)

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