「対面しない接客」模索 観光業界、改革の試金石に

西日本新聞 熊本版 中村 太郎 壇 知里

 東京五輪・パラリンピックが開催され、訪日外国人客の増加が見込まれた2020年。4年前の熊本地震からの復旧が進む熊本県内でも、観光への追い風が期待されていた。しかし、新型コロナウイルスの猛威で五輪は延期に。書き入れ時の大型連休に、全国各地の宿泊・観光施設は休業に追い込まれた。感染「第2波」を見据え、おもてなしの形も変わろうとしている。

 「検温にご協力お願いします」。人吉市の球磨川河畔に立つ老舗旅館の鍋屋本館。約1カ月半ぶりに営業再開した1日、ロビーでは従業員が宿泊や食事の利用者の体温を測っていた。

 フロントにはアクリル板が張られ、従業員はみなマスク姿。おかみの富田峰子さん(59)は「お客さまにはご不便をかけますが、まずは再開できてほっとしました」と笑顔を見せた。

 創業約200年の鍋屋本館にとって、コロナ禍による打撃は予想以上だった。国内感染確認後、送別会や宿泊のキャンセルが相次いだ。4月12日から休業し、ゴールデンウイークの予約は全て消えたという。

 県の調査によると、ゴールデンウイークの人出は阿蘇や天草などの主要観光地で前年比で9割以上減少。県内主要39施設の宿泊(実績・予約含む)は、3月に6割超、4月以降は9割超、それぞれ激減した。宿泊客減に伴う3~6月の経済的損失は推計で514億円に上る。

 熊本地震でも、直後2カ月の推計損失額は380億円に達した。この時と大きく異なるのは、全国の観光地が同じような苦境にあることだ。

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 「コロナ後」の観光はどう変わるのか。

 県観光連盟の中川誠専務理事は、当面の経営維持と中長期的な経営改善の2点を強調する。

 3月以降の外出自粛や休業に伴い、小規模事業者の経営体力は低下。「熊本地震以上に苦しく、いつまで続くかも分からない。なんとか現金を事業者に回していかなければ」と中川氏。東京のベンチャー企業と連携し、宿泊プランを先払いで販売できるウェブサイトに特設ページを設けた。

 その上で、インターネットを通じた集客強化に向けて、事業者向け研修を検討中だ。スマートフォンの位置情報を利用し、近くを訪れた客に電子クーポンを送信するなどの集客術を説き、事業者の自助努力を促す狙いだ。中川氏は「コロナをきっかけに経営支援として後押ししたい」と語る。

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 消費者の意識も変化している。観光関係者でつくる県観光協会連絡会議は4月下旬、インターネット上で約3千人を対象に意識調査を実施。旅行や外出への意欲は高まっている一方、当面は近隣の観光地が好まれ、景気悪化への不安からレジャー支出に厳しい時代になる、と分析。人が集まる都市部や屋内施設よりも、開放感のある場所が好まれるという。

 阿蘇広域観光連盟では調査結果を基に、「対面しない接客」を模索し始めた。従業員が玄関先に並ぶ宿泊客の見送りや、客室でのお茶出しをやめる。各客室にモニターを置いて、画面越しに接客する案も出ている。感染しにくい、適度な距離-。連盟事務局の森永光洋さん(36)は「コロナ後は、もてなさないことが『もてなし』になる」と語る。

 県内の観光業界に詳しい地域観光研究所(熊本市中央区)の坂元英俊代表理事は「当面、近場の観光地が好まれるのであれば、地域内で業者の協力が不可欠。景観や観光施設を周遊するプランを示すなど、地域全体で集客を図る必要がある」としている。 (中村太郎、壇知里)

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