「災禍克服の一助に」 書籍展示した島原市OB男性 普賢岳大火砕流29年

西日本新聞 社会面 真弓 一夫

 雲仙岳災害記念館(長崎県島原市)の語り部ボランティア松下英爾(えいじ)さん(65)は3日、自身が集めた大火砕流関連の書籍約210冊を館内に展示した。本を手に取れば、終息が見えない中で噴火災害に向き合った記憶が鮮明によみがえる。風化を防ぐため書籍を継承し、将来世代がさまざまな災禍に活用することを願う。

 市職員だった松下さんは29年前の6月3日、大火砕流に消防団員や報道関係者が巻き込まれたとの一報を受け、搬送先の病院に連絡係として派遣された。夜を徹して事務室に1人で待機し、行方不明者の氏名を伝えるニュースに見入った。

 「島原はどうなるのか」。土石流、大火砕流、多数の行方不明者…。災害の全体像が見えず不安に襲われたが、「私に何ができるのか」との思いも強めた。

 当時は市職員労働組合の委員長。避難所暮らしの市民の心身をケアする健康診断を行うよう市に要請。組合として噴火災害を語り継ぐ市職員の記録集(全8巻)も発行した。

 防災担当係長になると、報道陣の撮影拠点で、多くの犠牲者が出た「定点」にモニュメントを設置。退職後は語り部活動を始め、災害に向き合い続けた。

 書籍の展示は昨年に続き2回目。個人や団体が発行した災害の記憶集、島原で開かれたシンポジウムの議事録など、今では手に入らない貴重な資料も多い。

 「家も畑も失い、先々の生活が立てられないのが最大の悩み」「立ち入り禁止区域の家に家財道具を取りに行った」。一部をめくると、当時の焦燥感が伝わる。一方で、避難所で暮らす被災者の「住民同士の声掛け、激励の手紙に『独りぼっちじゃない』と支えられた」という声も見つけた。

 松下さんは噴火災害を知らない世代が増えることに危機感を抱く。書籍は公的施設に寄贈し、市民や研究者が当時を振り返られるようにするつもりだ。そして今、新型コロナウイルスの脅威が世界を覆う。「噴火災害とは異なるが人々が協力して克服するということは同じ。書籍がその一助になればと思う」 (真弓一夫)

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