「めぐりあう日」 運命に導かれる匿名出産の母娘、微妙な心の綾描く

西日本新聞 吉田 昭一郎

配給会社お薦めの一作~オンラインで見る「Help! The プロジェクト」

 独立系の映画配給会社が新型コロナウイルス対策で結集し、それぞれ権利を持つ旧作を会社別に「見放題」パックにまとめてネット配信する有料サービス「Help! The 映画配給会社プロジェクト」。配信13社の代表に自社パックからお薦めの一作を選んでもらい、見どころを紹介していただく。

 「めぐりあう日」(ウニー・ルコント監督=2015年、フランス、104分)

 ★クレストインターナショナル・渡辺恵美子代表から

 【作品】

 「冬の小鳥」(2010年)で鮮烈な監督デビューを飾ったウニー・ルコント監督の2作目となるのが本作「めぐりあう日」です。

 フランスには望まない出産をする妊婦を守る法律として、妊婦が名前を秘匿し生まれた子どもを養子に出す匿名出産制度というのがあります。

 「めぐりあう日」の主人公はこの匿名出産で生まれ、成人後、パリから母親の手がかりがある港町ダンケルクに移り住み、見えない糸に手繰り寄せられるように近づいていくというストーリーです。互いに母娘と認識していない2人が偶然に接近し、いつしか心を通わせていく過程がスリリングでもあり、感動的で、見る者は感情を揺さぶられてしまいます。

 原題は「あなたが狂おしいほどに愛されることを、私は願っている」。これはフランスの作家アンドレ・ブルトンが「狂気の愛」の中で自分の娘に宛てて書いた手紙の最後の一文です。9歳の時に韓国からフランスへ養子として渡った経歴をもつルコント監督は若い頃から、親の深い愛を伝えるこの言葉をずっと大切にしてきたと言います。

 映画ラストでは深い余韻を残す大切な一節として登場し、そこに監督の思いが込められていると言えるものです。

 【クレストインターナショナル】

 これまでにルキノ・ビスコンティ、ジャン・ルノワールらの旧作から、海外の映画祭で出合った欧州の新作、韓国のキム・ギドク、ホン・サンスら異色監督の作品まで幅広く配給してきました。気づけば今年30年目になります。

 思い入れのある監督の作品を、ずっと手掛ける配給会社でありたい。そして、さまざまなご縁をくれた映画に恩返しをしたいと思っています。

 【私の映画愛】

 見終わった後に一冊の本を読んだような気持ちになれる映画が好きで、自分が配給する作品も同じように思ってもらえたらと願っています。

 また、時代や国を超えて心理描写のリアルさにうならせられる映画や、寓話(ぐうわ)の中に真実が見える作品を見つけていきたいです。

「めぐりあう日」より©2015-GLORIA FILMS-PICTANOVO

 ★鑑賞記者の感想

 妻子ある相手との恋愛で生んだ娘を、「匿名出産」として施設に預けた母親と娘の再会ドラマ。実母を捜す娘と、生みの親であることを隠し通すかどうか揺れる母親との間の微妙な心の綾が描き出される。母親の相手の男がアラブ系であったという設定に、移民国家・フランスの今がかぶさる。いったん断ち切った血縁の絆をどう結び直すことができるのか。

 相手の男から捨てられた母親がそれでもその男をかばって語る姿が悲しくて、美しくて。わけありの恋と一時隔たれた肉親の情。愛することはどういうことなのか、考えないではいられない。(吉田昭一郎)

 ◆クレストインターナショナル見放題配信パック(「めぐりあう日」など計12作品)3カ月2480円(税込み)、販売は今年8月15日まで▽6カ月・寄付込み5千円、1万円 同6月15日まで。

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