過去に何度も挫折した中上健次さんの「枯木灘」…

西日本新聞 社会面 下崎 千加

 過去に何度も挫折した中上健次さんの「枯木灘」。5月の連休中に手を付けたが、またも途中でつらくなり、読了までに3週間もかかった。

 両親はこの小説の舞台、和歌山県・熊野地方の出身で、中上さんは高校の同窓生。私は小学生時代、夏休みを今は亡き祖父母宅で過ごしていたから、物語の情景は手に取るように分かる。登場人物の方言は叔父や叔母の話を聞く感覚だ。全国にファンがいる名作なのに、なぜ私には合わないのかとじくじたる思いでいると、電話口で母が言った。「私もなかなか読めんかった。なんか、しんどいやろ」

 身近過ぎて古傷をえぐられるのかもしれない。主人公や中上さんが生まれた被差別部落が濃密に描かれるたびに、「向こうは行ったらあかん」と手を引く祖母、「あれはあそこの者やから」と事もなげに話す祖父が思い出された。自分の根っこが差別と無縁でないことを、突き付けられたのだ。 (下崎千加)

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