例えばこんな人生相談

西日本新聞 オピニオン面 永田 健

 新聞や雑誌の人生相談を読むのが好きだ。まず興味深いのは相談の内容。「あるよなあ、こういう悩み」と共感することがしばしばである。次に感心するのは回答者のアドバイスだ。それぞれの専門分野を生かすだけでなく、人生に対する深い洞察に基づいた回答に目を見開かされる。

 それに倣って、ありそうな相談を私が創作し、それに回答をこしらえる自作自演をやってみた。ちょっとした頭の体操である。

   ◇    ◇

 【相談】先日、夫の実家の義母が突然倒れ入院しました。幸い現在は小康状態にあります。私は夫の実家に駆け付けて義父の世話をしたり、義母の退院後の生活環境を整えたりと、大変な毎日です。

 そのこと自体は問題ないのですが、私が納得いかないのは夫の態度なのです。

 やることが遅いのです。当面必要なお金を銀行から下ろしてきてと頼んでも私の手元に一向に届かない。入退院や検査のための手続きも、どんな事情があるのかさっぱり分かりませんが、なかなか進めてくれませんでした。ツケは全部現場の私に回ってきます。

 よほど会社が忙しいのかと思ったら、子飼いの部下をいいポストに就けようと画策していたようです。今やることでしょうか。

 義母のリハビリ器具も夫が「これがいい」と発注しましたが、正直あまり役に立つとは思えません。しかもいまだに届きません。

 私が大変なときも、夫はソファでお茶を飲んでくつろいでいます。こんな夫との関係を今まで通り続けていっていいのでしょうか。

   ◇    ◇

 回答を二つ用意した。

 【回答1】あなたのご主人は本当によくやっています。前例のないことですから全てうまくいくわけではないでしょうが、現にお義母さんは持ち直し、家庭も破綻せず危機を脱しつつあるではないですか。

 ご主人のお友達も皆ご主人を褒めています。あなたの家庭の危機対応を「○○モデル」などと称賛する人もいるくらいです。あなたがご主人に不満を言うのは百害あって一利なし。一家の難局であるこんなときこそ、ご主人を中心に結束して乗り切るべきなのです。ご主人の良いところにもっと目を向けましょう。

 【回答2】人間の本質とは、危機のときにどう振る舞うかで見えてくるものです。あなたは、夫が本当はどういう人間か気付いたのですね。「自分やお友達が大切なだけで、困っている人(つまりあなた)の気持ちが分からない人間」だということに。サポートの遅れ、能天気なくつろぎ、会社の人事優先など、全て根っこはそこなのです。

 当面の危機が収まったとしても、あなたが夫への根本的な不信を抱えたまま暮らしていくのは困難です。関係解消という選択肢も考えてみてください。

   ◇    ◇

 読者はすでにお気付きでしょうが、この人生相談は「相談者=国民」「夫=安倍晋三政権」「家庭の難局=コロナ禍」として読み換えることができる。

 安倍政権の支持率が急落した。検察人事と賭けマージャン問題が原因とされるが、それだけか。支持離れはもっと深いところで起きている可能性がある。

 あなたは回答1と回答2、どちらに共感しますか。

 (特別論説委員・永田健)

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