白人優位に怒る米国社会 「人種超え連携」日系人団体も抗議イベント (2ページ目)

トランプ氏に矛先 「なくならぬ差別、うんざり」

 米国で人種差別に対する国民の怒りが吹き荒れている。根底にあるのは政治、経済などあらゆる面で白人優位の社会にあって、マイノリティーへの構造的、潜在的な差別や偏見が一向になくならない現実と、それを助長するかのように振る舞うトランプ大統領への憤りだ。

 4日夕、首都ワシントンに隣接する東部メリーランド州の教会前広場。中西部ミネソタ州で白人警官に暴行され死亡した黒人フロイドさんを追悼するため住民約200人が集まった。「息子も彼のように命を落としたかもしれない」。白人女性ウィリアムズさん(59)が参加者に語り掛けた。

 黒人の夫との間に生まれた20代の息子は学生時代、車で帰宅中に警官から理由もなく停車を命じられ、車内を調べられた揚げ句、暴行を受けた。幸い同僚の警官が止めに入り、大事には至らなかったという。

 白人の自分には無縁だった理不尽な扱いを、肌の色が違う息子は何度も経験し、その度に悲しみと怒りで身を震わせた。「私たちが団結して、こんなことはもう終わらせましょう」。ウィリアムズさんの呼び掛けに大きな拍手が湧いた。

 差別の対象は黒人に限らない。ヒスパニック(中南米系)移民が母国語のスペイン語で話していると、白人から「英語を話せ」と罵倒されるなどの嫌がらせは珍しくない。トランプ政権が不法移民の取り締まりを厳格化して以降、彼らは移民・税関捜査局(ICE)を恐れて「摘発の動きがあったら連絡網で一斉通知する」(中米出身の男性)と警戒を強める。

 さらに新型コロナウイルスの発生源として指摘される中国への不信の高まりは、日系を含めたアジア系全体への差別を生んでいる。

 もちろん全ての白人が人種差別をするわけではない。それでも人権活動家たちは差別の根源として「有色人種は劣等だという感情が白人の中に無意識的に潜んでいる」と指摘する。人種間の機会均等が進んだとはいえ「就職や職場での昇進など非白人への冷遇は続いている」(ワシントン近郊の反差別団体幹部)のだ。

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 フロイドさんが暴行を受けて亡くなる生々しい映像は多くの国民に衝撃を与え、人種差別への怒りをかき立てた。そしてその矛先は白人優位社会の“擁護者”とみなされるトランプ氏へ向けられる。

 トランプ氏は暴行死事件を非難はするものの、人種間の融和に動く気配はない。逆に抗議デモの一部が暴徒化したことを殊更に問題視し、軍の投入も辞さない構えを示す。

 トランプ氏の強硬姿勢は全て、5カ月後に迫る大統領選のためだ。マイノリティー側は警察関連の予算削減やICE解体を求めているが、不法移民対策の強化を訴える白人保守層の支持に期待するトランプ氏がそれに応じる余地はない。

 だが米社会は今、コロナ禍による死者数の増大と失業者の急増、そして人種差別問題の「三重苦」に陥っている。最新の世論調査では、これまでトランプ氏の厚い支持基盤だったキリスト教右派の中で支持離れが起きていると伝えられる。

 焦るトランプ氏は「強い経済が人種間の不平等への対処にベストだ」などと述べ、経済再生の加速を強く訴える。デモを警戒するのはその妨げになるからだ。

 6日夕、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大事だ)」と改称されたホワイトハウス近くの通りで、デモに加わったヒスパニック女性のロドリゲスさん(55)は声を張り上げた。「白人支配は400年も続いている。もううんざりだ。トランプに期待できることなど何もない」

 (ワシントン田中伸幸)

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