3万2551回の甘茶かけ【坊さんのナムい話・13】

西日本新聞 くらし面

 もう2カ月前のことになります。4月6日付の本欄で、各地のお寺で8日に行われる「花まつり」を紹介しました。お釈迦(しゃか)様の誕生像に甘茶をかけて誕生日をお祝いする行事です。ところが7日に緊急事態宣言が発令され、軒並み中止になったり規模が縮小されたりしました。永明寺も例外ではありませんでした。

 参加を呼び掛けていた手前、何とか皆さんに花まつりに親しんでもらえる方法はないか考えました。思い付いたのが「あなたの代わりに住職が甘茶をかけます」という企画です。

 会員制交流サイト(SNS)で呼び掛けて、リツイートの件数だけ甘茶をかけることにしました。「まあ、そんなに反応はないだろう」と思っていたら、なんと3万2551件。2秒に1回かけたとしても、18時間かかる計算です。ふざけ半分で反応した方はおられるでしょうが、参加できないのを残念に思い、私に期待を込めてくださった方もおられるでしょう。実行を決め、さらにその模様を動画配信サイトでライブ配信することにしました。

 8日当日、始めてみたものの、なかなか思うように進みません。最初の千回で40分。果たして終わるのかと不安でしたが、2千回、3千回と続けていくうちに、全国から多くの方々がライブ配信に応援コメントを寄せてくださいました。教員時代の教え子や地元のお坊さんなど、強力な助っ人も駆け付けてくれました。

 マラソンランナーが次の電柱を目指して走るように一歩一歩積み重ね、2日間にわたって計15時間で甘茶かけを終えました。肩や腕はぼろぼろになりましたが、思いがけず人と人のつながりが生まれました。

 後日、動画を見られていた方から「動画のおかげできょうは一日テレビを見ずに済みました」とのお手紙が。北京に住む日本人からは、善意の大量のマスクが届きました。

 離れていても、私たちは互いに関わっていくことができる。その関わりが誰かの支えになり、終わりの見えない困難に立ち向かう力になりうる。そう実感しました。

 動画はユーチューブ「永明寺」で検索できます。 (永明寺住職・松崎智海 北九州市)

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