「まるで病院みたいでしょ」夜の街、中洲は今 万全の対策でも不安…

西日本新聞 井崎 圭

フェースシールド+アクリル板+手袋で完全装備

 東京で接待を伴う飲食店従業員の新型コロナウイルスへ感染が相次ぎ、全国の「夜の街」で警戒が続いている。福岡県では6月に入り、クラブやキャバクラなどに出ていた休業要請が解除(北九州市を除く)され、九州最大の歓楽街、福岡市・中洲でも多くの店が営業を再開。感染防止へどんな対策を打つのか。客足は戻ったのか。休業要請が解けた中洲を歩いた。

 4日夜。中洲中心部の飲食ビルに入る高級クラブのバーカウンター。オーナーママ(54)が透明のアクリル板越しに男性客と談笑していた。ママ、客ともフェースシールドを着用。ゴム手袋で客の水割りを作るママは「まるで病院みたいでしょ」と苦笑した。

 鹿児島から福岡へ出て27歳で水商売の世界に。高級クラブ勤めを経て14年前、念願だった自分の店を持った。常連客には、地場大手企業の幹部も少なくない。今回の約2カ月の休業期間中、閉店も頭によぎったが、「このまま終わったら、今までのお客さまの支えを裏切るんじゃないか」との思いでふんばった。

 アクリル板のほか、店内の換気や消毒、医療用の空気清浄器の設置など対策を取り、人との距離をあけるため稼働率も半分以下に落とす。それでも、ためらいはある。「どんなに対策しても100%感染しないとはいえない。積極的に来店を呼びかけるのは…」。

人の戻りは1~2割

 中洲に拠点を置く不動産会社の調査によると、緊急事態宣言後の自粛要請を受けて休業したクラブ、キャバクラ、スナックの7割が6月1日を機に再開したという。人通りも自粛要請期間に比べ少しは戻ったように見えるが、無料案内所や飲食店の従業員らに聞くと「通常の1割~2割くらい」という声が多かった。

 中洲の名所、那珂川沿いの屋台街も営業中の店は全19店のうち約半分の10店のみだった。観光客の姿はほとんどない。屋台「伸龍」の岡村祥平店長(36)は「北九州市の感染再発でさらに減った気がする」と肩を落とす。

 午後10時過ぎ。中洲の目抜き通りでは、勤めを終えて家路につく女性たちの姿がちらほら。キャバクラに勤める女性(24)は「お客さんがいないので、店から早めに帰らされた。(なじみの客を)誘っても『会社から止められている』と言う人が多い。今の時期は接待の経費も使えないんでしょうね」

 東京では接待を伴う飲食店での感染が相次ぐ。中洲の高級クラブで管理職を務める男性(60)は、客の戻りが悪い理由について「ある知事が全ての飲食店を『夜の街』とひとくくりにして発言しており、繁華街のイメージ悪化につながっている」と指摘。「感染事例を詳細に言ってくれないと、まじめに対策する店や接待を伴わない居酒屋などには風評被害でしかない」と、憤まんやる方ない様子だった。

中洲は今後2カ月が勝負

 新型コロナの終息が見えない中、自粛期間中に廃業を決断した店もあった。小さな飲食店が立ち並ぶ中洲中心部の「人形小路」では、緊急事態宣言前に営業した30店のうちバーなど4店が再開を諦めたという。人形小路の町内会長を務める田口隆洋さん(72)は「みんな頑張っていたが、新型コロナがどこまで続くか見通せなかったのだろう」とため息をついた。

 中洲の飲食ビルを管理するライン不動産(福岡市)によると、管理するビルに入居する650店のうち閉店は5店舗にとどまったものの、50店程度から「やめようかどうか検討している」と相談があったという。同社の村上剛社長は「どの店も6、7月でどれだけ人が戻るか感触を探っている状況だと思う。逆に言えば、今後2カ月が(街の浮沈を決める)勝負になるかもしれない」と話した。

(井崎圭)

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