新潟を訪れ、あの日の現場を歩いたことがある…

西日本新聞 オピニオン面

 新潟を訪れ、あの日の現場を歩いたことがある。入り組んだ通学路ではなかった。中学校の校門前から海に続く直線道路。そこを通って海の手前で左に入ると、当時の自宅があった

▼娘を捜す父親の歩みは不条理にも、この道とは対照的だった。苦悩と曲折の連続。「娘が帰ってくるならどんな苦労もいとわないが、終着駅が見えない」。こう語ったこともあった。無念さは察するに余りある

北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父滋さんが亡くなった。87歳だった。めぐみさんが部活からの帰りに姿を消したのは1977年。以来、娘の足跡を妻の早紀江さん(84)と追い続け、拉致が判明して以降は「被害者の会」をけん引してきた

▼政府への粘り強い陳情、署名活動、千回を超える講演…。「拉致なんてあるのか」と中傷を浴びた時期もあった。それでもじっと耐え、政府に怒りの声を向けることもなかった

▼温厚で誠実だった滋さんの訃報は、めぐみさんの娘で横田夫妻の孫に当たるキム・ウンギョンさんに届いたのか。政府は北朝鮮側にぜひ知らせてほしい。夫妻が「生きている」と信じるめぐみさんにも伝わるように

▼早紀江さんをはじめ被害者の肉親は高齢化し「残された時間は少ない」と訴える。拉致問題解決に意欲を示してきた安倍晋三首相も重く受け止めていよう。困難はあっても、あらゆる手だてを尽くし、打開への道筋を見いだしたい。

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