「あしたのパスタはアルデンテ」 新社長が同性愛告白、さあ大変!

配給会社お薦めの一作~オンラインで見る「Help! The プロジェクト」

 独立系の映画配給会社がコロナ対策で結集し、それぞれ権利を持つ旧作を会社別に「見放題」パックにまとめてインターネットで有料配信する「Help! The 映画配給会社プロジェクト」。配信13社の方々に自社パックから一押しの作品を選んでもらい、見どころを紹介していただいています。

 「あしたのパスタはアルデンテ」(フェルザン・オズペテク監督=2010年、イタリア、113分)

 ★セテラ・インターナショナル 山中陽子代表から

 【作品】

 舞台は南イタリアの町・レッチェ。老舗パスタ会社新社長の就任ディナーの席で、次男トンマーゾが自分はゲイだという秘密を告白しようとしたら、跡継ぎの長男アントニオが先に「僕はゲイだ」と告白したからさあ大変! 家族は大揺れ、現社長の父は卒倒して兄を勘当に。次男は秘密を告白しそびれて、パスタ会社を継ぐ羽目に…。本当は作家になりたい夢があるのに。

 というストーリーラインに、家族の固い絆とユーモアあふれる涙と笑いがぎっしり詰まった、最高においしいイタリア映画のヒット作です。

 大家族の出演者たちのキャラクターが親しみ深く、特にトンマーゾの友達であるゲイの4人が家にやってくる後半からは最高の盛り上がりに。美しいイタリアン・ボーイズ多数出演で目にも楽しく、またマドンナやジョン・トラボルタも絶賛したご機嫌なサウンドトラックも素晴らしいですよ。

 【セテラ・インターナショナル】

 1989年に設立、今年32年目です。一貫して欧州の良質なエンターテインメントを厳選してお送りしています。90年代には「から騒ぎ」「最高の恋人」「パリのレストラン」、2000年代に入ってからは「ムッシュ・カステラの恋」「パリ・ルーヴル美術館の秘密」、近年では「クロワッサンで朝食を」「ハンナ・アーレント」「パレードへようこそ」「はじめてのおもてなし」など。

 会社を設立したのは、フランスの俳優ジェラール・フィリップが好きになり、往年のファンに懐かしく見てもらい、若い人にも知ってほしいと、彼の映画祭を考えたのがきっかけです。これまでたびたび開いています。

 最新作は公開時期が新型コロナウイルス禍にばっちりはまってしまったフランス映画「最高の花婿 アンコール」と、ドイツ映画「お名前はアドルフ?」(ともに6月10日時点で劇場公開中)、どちらも現代に問いかける痛快なコメディーです。

 【私の映画愛】

 これを日本の皆さんに見てほしい、と思える作品を一本ずつ丁寧に配給してきました。

 私は、それを見ることでその人の生き方や思考に何かプラスになる、それが映画だと思っています。そうした心が豊かになったり、文化や芸術を知ることができたりするような、世界の良質な映画を紹介したいと思っています。

「あしたのパスタはアルデンテ」より©Fandango2010

 

 ★鑑賞記者の感想

 パスタ会社の新社長を任せようとした長男が、いきなりゲイだと告白した時、驚愕(きょうがく)する現社長で父親のヴィンチェンツォの表情が印象的だ。共同経営者らを招いた席上である。ありえない、俺をからかっているのか、バカヤロー…そんな憤りが聞こえてきそうなリアルさだから、思わず噴き出してしまった。

 次男もゲイで、作家志望だ。長男を勘当した父親はそれに気づかぬまま「社長はおまえに」と次男を頼る。告白して自由に生きたかった次男だが、告白は火に油の大混乱を招くだろう。ゲイとばれないように振る舞い、工場を手伝う。

 次男は兄を戻すよう説得を試みるが、父親はかたくなに拒み、苦虫をかみつぶしたような顔をする。外出先では世間のうわさになっていないか人目を気にして落ち着かない。父子の挙動の一つ一つがおかしくて笑ってしまう。笑いを誘う隠し味が利いているのだ。

 笑って、笑って、笑って、ついには見る側が、ゲイだ、同性愛だ、とあげつらうばかばかしさにあらためて思い至るところがある。LGBTなど性的少数者の悩みを陽性のエンタメ仕立てで描き出しながら、人生で大事なことをさりげなく伝える手際がすてきだ。

 さて、前時代的な差別と偏見を眼前に見せつけるような父親の表情が、最後は緩むのかどうか。(吉田昭一郎)

 ◆セテラ・インターナショナル見放題配信パック(「あしたのパスタはアルデンテ」など計15作品、6月12日から6作品追加し計21作品に)3カ月2480円(税込み)▽6カ月・寄付込み5千円、1万円。いずれも8月15日まで販売する。

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