「校則なくした中学校」東京・桜丘中の元校長、西郷孝彦さんが出版

西日本新聞 くらし面 前田 英男

「学校に行けば楽しいことがある」10年の軌跡

 新型コロナウイルスの影響で長期休校していた学校が再び動きだした。終息していない中での授業再開に学校現場は難しいかじ取りを迫られるが、こうした状況だからこそ教員や保護者が手にしてほしい一冊がある。元中学校長の西郷孝彦さん(65)が、10年にわたる学校改革の軌跡をつづった「校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール」(小学館)だ。問い掛けているのは一つだけ、子どもたちは幸せか-。

 西郷さんは今春まで、東京都世田谷区の区立桜丘中で校長を10年間務め、その取り組みは本紙教育面(昨年5月)で紹介した。

 同校が注目されたのは、子どもたち自身が学校のあり方を考え、行動する仕組みを作り出したこと。同校には校則や授業開始のチャイム、定期テスト、宿題が「ない」。一方、服装や髪形、スマートフォンやタブレットの持ち込み、登校時間、廊下での学習、授業中に寝る、授業を批判する「自由」がある。結果、学校の荒れはなくなり、都内有数の進学校となった。

教員だから偉い、はあり得ない

 西郷さんは「誤解してほしくないのは、最初に結論ありきではないということです」と言う。まず手を付けたのが教員の意識改革。「教員だから偉い。そんなことはあり得ないのです」と訴え続け、声を荒らげず、威圧的な態度を見せずに子どもと信頼関係を築くことの大切さを説いた。

 親に対しては「『ああやれ』『こうやれ』と過干渉になることは、子どもから考える力を奪ってしまう」と指摘。「親の役目は『安心できる環境』を与えてあげることだけです」と強調する。

 子どもたちが疑問点や改善点をぶつけ合う生徒総会での決定を重視し、決まり事などの変更を実現させてきた。「子どもたちが『これはこうだ』と思い込んでいることを『引っ繰り返せるんだよ』と教えてあげることが教育ではないでしょうか」

 休校中の今年3月、学校を去ることになったが「在校生や卒業生が個別に顔を出してねぎらってくれた」と笑う。教え子たちとは今も交流を続けている。

 これからの学校の方向性について西郷さんは語る。「子どもひとりひとりの個性が異なるように、『何が楽しいか』を決定するのは校長でも学校でも教員でもなく、子どもなのです。545人の生徒がいたら、545通りの『楽しさ』がある。でも全員に『学校に行けば何か楽しいことがある』と思ってほしいのです」

(前田英男)

PR

教育 アクセスランキング

PR

注目のテーマ