実在のラジオ番組にからめて6人の人生模様が切り取られた短編集

「今週、気づいたこと!」

このフレーズに反応する人はどのぐらいいるだろう。「JUNK」や「オールナイトニッポン」と聞けば、もう少し反応する人が増えるにちがいない。そう、ラジオの深夜放送の話だ。こうした実在の人気番組のタイトルやパーソナリティの名前、番組内で語られたトークが次々と出てくる短編集である。

ただ、出てくるだけではない。そうしたラジオ番組を聞いている“私”が主題の小説なのだ。たとえば、「今週、気づいたこと!」(『伊集院光 深夜の馬鹿力』)が出てくるのは第1話で、語り手は70歳の誕生日を過ぎて間もない女性。しかも、ケアハウスに入所するところからはじまる。

『馬鹿力』リスナーなら、あの深夜ラジオの世界とケアハウスぐらい不釣り合いなものはないと思うかもしれない。しかし、すぐに、この女性の中に深夜ラジオの精神が根付いていることがわかる。冒頭から自分の世話をしてくれることになったスタッフや長男の嫁に対して毒づく。ただし、それは心の中でだけ。表面的には微笑んだり、嫁を褒めたり、大人として振る舞いながら、こんなことを考えている。

「娘時代から、自分の親友たちが皆、驚くほど変な男と結婚していくのを見てきた。また、夫の友人たちもあまり気に入らなかった。ましてや、夫の友人の妻たちはさらに、今どきどっからこんな非常識な女を探してきたのだ、と言いたくなるほどひどかった」

1970生まれの作者は、女性作家の鋭い視点で人が内に抱える毒をユーモラスに描く。自分の親世代の主人公の人生行路を短い文章で巧みに浮かび上がらせる。

あっと思ったのは、主人公が深夜ラジオをはじめて聞いたきっかけだ。だれもが「反抗期の中学生」のときにハマるのではない。夫や子供たちの世話に追われる主婦の場合だってある。正月というのに零時を回って台所で汚れ物を洗っていた主人公は、ふいに流産した娘のことを思い出して涙する。泣き声を聞かれないようにつけたラジオからビートたけしの声が聞こえてくる。

若い世代は、自分より年上の人たちにもそれぞれの過去や内面世界があることを知るだろう。作者と同世代なら、親とのつきあい方も参考になる。しかも、この他に5つの短編が収められていて、また違った年代の主人公たちのドラマに触れることができる。

 

出版社:双葉社
書名:ラジオ・ガガガ
著者名:原田ひ香
定価(税込):726円
税別価格:660円
リンク先:https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-52354-6.html

読書案内編集部

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