幼い日の決意を貫き、アフリカでのバッタ研究に力を尽くすまでの物語

西日本新聞

 「バッタは漢字で『飛蝗』と書き、虫の皇帝と称される」のだそうだ。この「虫の皇帝」を研究対象とする著者は、すでに本書の新書版を2017年に上梓していて、20万部のベストセラーを記録している。今回は「新装版」の発売なのだが、これには注釈が必要である。旧版をコンパクトにまとめ直すといったことではなく、今回「児童書」に衣替えし、新たなエピソードをくわえて出版したものだからだ。

 小学3年以上で習う漢字にはすべてフリガナが付けられ、子どもの読者に対応した。さらに、難しい言葉には欄外に注釈が施された。これが実によくできていてわかりやすい。「裸一貫」という語には「 服は着ているけど所有物がほとんどない状態のこと」、「奮発」という語には「いつもはしないけれど、たまに思い切ってお金をたくさん使うこと」など、多少のウィットを含みつつ、きっと子どもたちの勉強にもなるに違いない説明がほとんどのページに付けられている。

 この本はバッタ研究の専門書ではない。タイトルの通り、バッタの大量発生によって毎年大きな被害を受けているアフリカ北西部の国・モーリタニアにおもむいた著者の経験が軸になっている。かの国のバッタ研究所とそこで活動する人々、地元の人々との交流、日常のフィールドワークや研究の様子など、アフリカの社会・風土も含めて、現実に即しつつもユーモアたっぷりに描かれる。バッタの生態をじかにフィールドで研究するその姿は、内容豊富で興味深い記述ばかりだ。

 そして、子ども向けに装いも新たに刊行されたことを考え合わせるなら、若い研究者の「自叙伝」の側面が刺激的である。幼い日に昆虫に関する疑問を次々に解き明かしていく『ファーブル昆虫記』を読み、昆虫学者になることを決意する。大学は昆虫研究ができる農学部に入学、そして大学院に進学し、博士の学位を取得、さらに研究者として食べていくための苦労と努力など、包み隠すことなく振り返っている。虫好きの子どもたちだけではなく、好きなことを究めたいと思案している子どもたちにとっても、よい指針になること、請け合いの良書である。

 

出版社:光文社
書名:ウルド昆虫記 バッタを倒しにアフリカへ
著者名:前野ウルド浩太郎
定価(税込):1,980円
税別価格:1,800円
リンク先:https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334950880

西日本新聞 読書案内編集部

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