ひとりでも生きられる=自由に愛すること 普遍的な愛の本質を説く名著

西日本新聞

 著者の瀬戸内寂聴さんはなんと今年98歳。変わらずお元気そうで、しかも最近は若い秘書の女性と共に、アプリやSNS、ケータイ小説など新しいことにもどんどん挑戦されている。

 本書は1973年、著者の出家直前に刊行された愛についてのエッセイ集であり、2002年に四六判となって刊行されたものの新装復刊である。驚きのロングセラーだが、2002年の際に加えられたという著者のあとがきには、「三十年近く経った今読んでも、私は一行も書き直したいとは思わない。」とある。なるほどその通り、さらにそれから18年を経た今読んでも、不思議なことに古さを全く感じないのだ。

 その理由は、本書がまさに愛とフェミニズムの本質を鋭く言い当てているからではないかと思う。

 「生きることは愛すること。愛することは許すこと。」と著者は言う。出家に至るまで奔放と呼ばれる恋愛を重ねてきた著者は、当時ひどいバッシングを受けた。本書にはその恋愛遍歴も記されているのだが、ベストセラーになったということは、それだけ愛の真実が女性たちの心を捉え、共感を呼んだからに違いない。

 生きていくうえで、自分が感じるちょっとした違和感に目をつぶらず、自分らしく生きることができる道を模索することが本当のフェミニズムであろう。愛においても、自分の感情に忠実に行動し、思いのままに人を愛すること。それが、自分らしく生きることに他ならない。「生きることは愛すること。」である。そして愛する人にも同じようにその人らしく生きてもらう。それが「愛することは許すこと。」ではないだろうか。

 時には傷つけ、それ以上に自分も傷つくだろうが、その痛みに覚悟を持つ。自由に伴う責任を自分ですべて引き受けられる、それが著者が体現してきた「ひとりでも生きられる」ということではないかと思う。

 50年近く経っても、女性を取り巻く状況はあまり変わらないのかもしれない。産む性である以上、育児や家事の問題を引き受けざるを得ず、違和感を覚えながらも未だに葛藤の中でもがいている人も大勢いるはずだ。そういう人にこそ、ぜひ読んでほしいと思う。とても1973年刊行とは思えないほど現代ともシンクロしていて、きっと勇気をもらえるはずだ。

 愛の本質は永遠に変わらない。本当に自分らしく愛せているのか自分に問うためにも、すべての女性にぜひ手に取ってほしい一冊だ。

 

出版社:青春出版社
書名:ひとりでも生きられる
著者名:瀬戸内寂聴
定価(税込):1,452円
税別価格:1,320円
リンク先:http://www.seishun.co.jp/book/22016/

西日本新聞 読書案内編集部

PR

読書 アクセスランキング

PR

注目のテーマ