どこに逃げれば…災害弱者、困難な避難先探し 不安大きく

西日本新聞 くらし面 三宅 大介

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日常的に支援が必要な高齢者や重い障害者など災害弱者の避難先の確保が一層、難しくなっている。感染すれば重症化するリスクが高い人が少なくなく、もともと数が十分ではない福祉避難所での受け入れ自体も厳しい。行政側は、可能なら自宅にとどまる「在宅避難」も含め、指定避難所に限らず安全な場所を選定・確保し、事前に避難行動を確認するよう呼び掛けているものの、当事者の不安は大きい。

 バリアフリー設備がととのい、専門職による支援も期待できるのが福祉避難所。コロナ禍で実際に開設できそうか-。福岡県大牟田市は、福祉避難所として協定を結ぶ計19カ所に対するアンケートを4月に行った。ほとんどが老人保健施設や特別養護老人ホームなどの入所施設。「家族の面会さえままならないと聞き、確認を急いだ」(市防災対策室)という。

9割受け入れ不可

 結果、「受け入れ可能」だったのは1カ所、市社会福祉協議会が運営する市総合福祉センターだけ。入所者はいないものの「(距離を十分空けるなど)感染防止策も考え、10人ぐらいなら」との回答だった。

 そもそも市が従来、想定していた計19カ所の受け入れ可能人数は、最大でも350人程度。今後はエレベーターや多目的トイレが設置されている一般の避難所でも、間仕切りなど個別スペースを確保した上で受け入れ、保健師の巡回などで対応していく方針だ。

 一方、1人暮らしのお年寄りや重い障害者など、普段から通所や短期入所を利用している人や家族に対しては、ショートステイを活用した避難も検討するよう、呼び掛けている。

 もともと認知症の人を地域や事業所、行政が連携して見守る活動も進む。「既に大雨の予報が出れば、利用者に泊まりを勧めている事業所もある。感染リスク対策への理解も含め、互いに顔の見える関係なら、施設側の懸念もある程度は軽減されるのでは」と同室の担当者。「ケース・バイ・ケースで一歩ずつ着実に、避難先の確保を調整していくしかありません」

電源が死活問題に

 密集を避けるため指定避難所だけでは収容人数が不足することから、内閣府は4~5月、自治体にはホテルや旅館の活用も促したほか、住民側に対しては、親戚や知人宅、また安全が確保される場合は自宅にとどまる在宅避難も、選択肢の一つとして示した。

 2016年、熊本地震で被災した現地の障害児支援に携わった福岡市の教職員OBで災害備蓄管理士の森孝一さん(61)は「一定の衛生的な空間が保障され、備蓄や専門の支援スタッフもととのった指定避難所や福祉避難所は、現段階ではほとんどない」と指摘。「結果的に在宅避難を選択せざるを得ない」とみる。

 ただ在宅でライフラインが途絶えれば、特に停電は人工呼吸器などを使う人にとっては死活問題。食料や水を備蓄していたとしても「孤立して必要な物資や情報が届かない可能性が高い」と森さん。「医療機器を動かせる非常用電源の購入補助など自治体による財政支援のほか、外部から速やかに相談や支援に駆けつけられる仕組みも必要では」

備品足りない恐れ

 福岡県太宰府市で、人工呼吸器を常時使用する寝たきりの長男(12)と家族5人で暮らす母(41)は「現実的に避難は考えられません」と打ち明ける。

 加湿器など複数の医療機器も必要で大型のバギー(車椅子)を自家用車に乗せるのさえ一苦労。一戸建ての家は高台にあり、一昨年と昨年の大雨では、近くの山道を雨水が川のように流れ、不安な夜を過ごした。

 停電時でも医療機器が使えるよう、夫が約10年前にガソリン式の自家発電機を購入。一応、玄関に置いているものの「これまで一度も使ったことがなく、万が一のときに使えるかどうかは不安です」。

 コロナ禍では加湿器用の精製水が品薄となり、水道水を煮沸して数日、しのいだ。「地震などの災害が重なれば、必要な備品がもっと手に入れられなくなるかも」。最近、日ごろの備えの大事さをより痛感する。

 避難生活を「自助任せ」にしないサポートをどう構築していくのか、新たな知恵が求められている。 (編集委員・三宅大介)

 【ワードBOX】在宅避難
 近年の台風被害を踏まえ、内閣府と消防庁は本年度、住民がとるべき避難行動について周知。「原則、自宅外への避難が必要」とする一方、浸水しても備蓄が十分あるなどの場合は「自宅にとどまり、安全確保することも可能」と呼び掛けている。障害者の日常生活用具の一つとして、医療機器用のバッテリーや発電機を購入する際の補助制度を設ける自治体も福岡県久留米市、同県大野城市、佐賀市など全国的に少しずつ増えている。

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