相次ぐ「レイプドラッグ」被害 加害者の8割が「顔見知り」

西日本新聞 社会面 西村 百合恵 小川 勝也 古川 大二

 睡眠薬などのレイプドラッグを使った性犯罪の摘発が増える一方、睡眠薬の作用で記憶が失われている間に証拠もなくなり、立件が難しいケースも少なくない。被害そのものに気付きにくく、潜在化しやすいのも特徴だ。知人や会社の同僚などとの食事後に被害に遭う事例もあり、身近な人の“裏切り”に苦しむ人もいる。専門家は「知り合いに対しても性善説ではいられない時代」と語る。

 「飲みに行ったが途中の記憶がない」。準強制性交罪などで起訴された40代の男から被害を受けた女性は、周囲にこう打ち明けた。男とは知人関係で「こんなことをする人と思わなかった」と憤っているという。

 内閣府の調査(2017年度)では、無理やり性交される被害に遭った男女164人のうち、加害者が交際相手や配偶者、同級生や会社の上司・同僚など「顔見知り」と回答したのは約8割に上った。

 警察庁によると、10~19年に摘発した薬物を使った性犯罪事件(355件)で、被害者の8割は20代以下。福岡でも同じ傾向だ。

記憶あいまい

 捜査関係者などによると、睡眠薬の種類によっては数時間から数日で成分が体外に排出される。証拠保全のため、すぐに警察や病院に駆け込むことが望ましいが、薬の影響で記憶があいまいだったり抜け落ちていたりするため、被害を自覚しにくい。

 警察庁は昨年7月、薬物使用が疑われる被害申告を受けた場合、速やかに証拠保全をして、薬の影響による健忘症状にも留意するよう通達。被害の届け出をためらっても、採尿などの実施を検討するよう求めた。

すぐに相談を

 性暴力被害者支援センター・ふくおかによると、「記憶がなく不安」などとレイプドラッグの使用が疑われる被害相談は近年増えているという。被害を受けた数年後にやっと相談できたという人もいる。浦尚子相談員は「被害者が『飲みに行った私が悪い』と自分を責める傾向が特に強い。記憶の喪失につけ込んだ卑劣な犯罪だ」と強調する。

 医薬品をレイプドラッグとして使う犯罪に詳しい旭川医科大の清水恵子教授は「加害者が撮影した動画を残しているケースは多く、採血や採尿、毛髪鑑定などの証拠があれば立件は可能。警察はもとより、被害者もあきらめないでほしい」と訴える。

 性暴力被害者の支援をしてきた角田由紀子弁護士(東京)は「睡眠薬が入手しやすくなり、スマートフォンなどの普及で薬を悪用する手口の情報にアクセスしやすくなっている。犯罪の実態が日本でまだ周知されておらず、社会全体で危険性を共有する必要がある」と話す。悪いのは犯人だが、角田弁護士は「身を守るために、飲み会で離席後に飲み残しを飲まない対策も有効。体に異変を感じたらすぐに相談を」と呼び掛ける。

(西村百合恵、小川勝也、古川大二)

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