忘れない「28水」水害体験者らが冊子刊行 甚大被害の福岡・大刀洗町

西日本新聞 筑後版 大矢 和世

 1953年6月25日から29日にかけ、北部九州を猛烈な豪雨が襲った。「28水」と呼ばれる昭和28年西日本水害だ。福岡、佐賀、熊本、大分県などで死者・行方不明者が千人を超え、筑後川流域では床上浸水約4万9千戸、被災者数は約54万人に上った。大堰(おおぜき)村(現在の福岡県大刀洗町大堰小学校区)でも650戸中420戸が浸水する甚大な被害が出た。当時を知る住民らが冊子「故郷おおぜきあの日を忘れない昭和28年水害の記憶」をまとめ、防災への思いを新たにしている。

 冊子はA4判32ページ。水害の概要、被災当時の記録と復興後の現在の様子、住民の証言集、近年相次ぐ水害などを写真や図版を多用して紹介している。

 「憩いの園大堰交流センター」に展示されている写真が、冊子作成のきっかけになった。故實藤(さねふじ)量平さんが28水当時の状況を撮影した約70枚で、遺族が10年ほど前、センターに寄贈した。ここ数年、水害が相次ぐ中で「当時の記憶も薄れている。写真や体験を伝えよう」と、住民らによる「28水に学ぶ会」が発足し、2018年から冊子を作る準備を進めてきた。

 編集委員も務めた後藤逸子さん(72)は5歳で28水を経験した。「自宅2階から舟で助けてもらい、堤防に上げてもらったけど、今度はそこが地割れしてきた。母は妊娠7カ月で妹は3歳。必死で走った」と振り返る。編集では、實藤さんの写真の現場が現在どんな様子かをたどり、照合した。「今の人は想像もつかんやろうね」

 写真には社会奉仕団や青年団の姿も。高校生が家財を片付けたり、青年団が土のうを積んで堤防を復旧したりする様子が残されている。体験者の聞き取りをした編集委員の松熊正隆さん(72)は「ボランティアという言葉もない時代に横のつながり、もやいの精神で助け合った」とみる。一方で「幸い1人も亡くならなかったので、記録も記憶も残りにくかった」とも。

 冊子は昨秋に刊行し、大堰校区での全戸配布や町立図書館、町内小中学校などへ寄贈した。冊子を基に、地元大堰小では5年生が総合学習で防災マップを作るなど、継承の取り組みが生まれつつある。

 67年目の今年も梅雨を迎えた。松熊さんは「水が入れば道は見えなくなる。逃げるためには危険を理解しなくては」。後藤さんも「最近の水害でも(28水を経験したはずの)お年寄りが『どうしたらいいか分からない』と言う。危機感をみんながもたなきゃ」と声を大にする。山本浩センター長(66)は「冊子を見ながら、いざというときにどう行動したらいいか具体的に考えてもらえたら」と期待する。センターは今後、28水の講習会やパネル展なども検討している。 (大矢和世)

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