おもてなし、食文化に鍵 テイラーさんの福岡日記

西日本新聞 国際面

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を受けて外出を自粛していた時に、普段当たり前の「食べること」の大切さを再認識しました。私は米国、日本を含む6カ国に住んだ経験から「食」を楽しむには、自国と他国の食文化の違いを理解して受け入れることが大切だと感じています。

 今年結婚30周年となる日本人の妻美帆は日本全般についての私の先生で、おかげで日本の礼儀作法など何でも違和感なく行えるようになりました。ただ一つだけ、どうしても心から自然にできない事があります。それは麺類をすする食べ方です。私は幼少の頃から、音を立てて食べてはいけないと両親から教わりました。ですから19歳で初来日して中・四国地方で2年住んだ時、初めて入った香川県の讃岐うどん店で周りの日本人が麺をすする中で、一人だけすすれなかった事を覚えています。

 日米以外の国でも、独特の食文化を知り大きな発見でした。手食文化のジンバブエでは、トウモロコシの粉を熱湯で練り上げた熱い餅のような「サザ」を素手で食べる現地の人たちの横で、私だけ両手指をやけどしながら苦労して食べた経験があります。日本で汁物を食べて「猫舌」であると認識した私は、手も「猫手」なのかと思いましたが、ジンバブエの人は熱い物を平気で手で触れると後で聞いて納得しました。

 アフガニスタンではパンを床に落としたらすぐに拾って、キスして額まで掲げてお皿に戻します。余談ですが、食べ物を落とした時に、国や地域によって「3秒ルール」「5秒ルール」(落として何秒以内なら食べても大丈夫かという考え方)などがあるのは面白いですね。

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 私は宗教上の理由でアルコールやカフェインを含む物は飲みませんので、福岡の屋台でほろ酔いの市民の人たちと同席した時は、私だけ水か麦茶で乾杯して日米市民交流を楽しみます。カフェインは日本茶にも含まれるので、お茶所・九州の各地で出された緑茶を飲まずに帰ることに心苦しさを感じます。

 初めて九州に住んで、九州のしょうゆが甘いことに気づきました。私の妻は関東出身で、妻が作る和食は関東のしょうゆの味付けですので、九州の食文化のうれしい発見でした。アイス大好きの甘党の私にとって、米国産牛肉を九州の甘口しょうゆベースの味付けで食べるのが、福岡生活でのお気に入りです。

 私が敬服する日本の食文化は、食事の前に言う「いただきます」です。食事に携わってくれた人や食材への感謝を表す「いただきます」は日本特有の深い意味を持つ食事の時のあいさつで、家庭の朝食から、大濠公園の親子連れのお弁当、博多ラーメン店でのランチ、高級レストランでのディナーまで、日本の皆さんがどこでも口にする美しい日本語で、英語には相当する表現がありません。

 グローバル化が進む中で世界の食文化の多様性を理解することが、福岡や九州を外国人にとって、より魅力的な都市とするための「おもてなし」のヒントとなるかもしれません。

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 在福岡米国領事館のジョン・テイラー首席領事(52)のコラムです。随時掲載。

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