新たな価値観への対応を 千相哲氏

西日本新聞 オピニオン面

◆コロナ後の観光

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除され、観光地でも日常が少しずつ戻りつつある。訪日外国人観光においては、多くの国が海外渡航制限の措置を取り、また日本においても、防疫強化や入国制限等の措置が取られたことにより、外国人観光客が激減した。グローバルな人や物の加速的な動きが感染拡大を世界的にもたらしたウイルスの脅威を考えれば、コロナが収束したとしても以前のような観光状態に戻るとは考えにくく、人の動きを必然とする観光のあり方が大きく変貌することは想像に難しくない。

 日本の観光は、2010年代に入ってから外国人観光客の波が押し寄せ、これまで外国人誘致に力を入れてきた。外国人への依存度の高かった地域では、コロナ以前の観光公害の問題から一変し経済へのダメージが顕在化している。今年3月の日本人延べ宿泊者数が前年同月比42%減に対し、外国人延べ宿泊者数は86%減と、例を見ない落ち幅である。一方で国内の旅行消費額に占める日本人の国内旅行が全体の82%(19年)と、底堅い国内需要があり、国内観光の活性化が急務である。

 新型コロナが人々の心に与えた不安や恐怖は大きく、旅行者は安心・安全を求める意識が強まり、当分の間は海外より国内、国内でも近距離の混雑しない所を求める傾向が顕著に表れると思われる。団体より少人数または一人旅のトレンドが鮮明になり、「どこで何がしたい」から「なぜ、どのように」へと、観光の目的と手段を重視するニュー・ノーマル時代への移行が本格化する。受け入れ側では、地域資源を活用し、観光客数ではなく、観光の質を高めることが大切になる。同時に防疫の徹底、衛生情報の発信がより重要になる。またオンラインや非対面サービスが求められる。

 新型コロナの感染防止策として注目された在宅勤務やテレワークにより、生活者に新たな価値観が生じ、従来とは異なる余暇や旅行行動を意識するようになる。観光ビジネスは持続可能なあり方を模索していかなければならない。コロナという見えない恐怖との闘いは依然続いているが、これまでと異なる旅行スタイル、オンライン生活化の潮流に対応する未来への準備に取り組むチャンスでもある。

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 千 相哲(せん・そうてつ)九州産業大地域共創学部長 1959年生まれ、韓国・ソウル市出身。立教大大学院修了(社会学博士)。専攻は観光学。国際観光の振興や、観光まちづくりに関する研究と教育に取り組む。

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