オンライン授業で著作物「グレー運用」 改正法解釈、苦慮する学校

西日本新聞 くらし面 前田 英男

入学式ライブ配信のBGMに「警告」

 新型コロナウイルスの感染拡大による学校の長期休校で急速に広がったオンライン授業。各学校では再開後も活用を模索するが、映像内での教科書をはじめとする著作物利用についてグレーな運用が目立っている。前倒しで施行された改正著作権法により自由度は高まったものの、現場の理解はなお追いついていない。

 福岡県のある中学校が動画投稿サイトユーチューブ」で公開している授業動画に、教科書や市販のワークブックなどはほぼ登場しない。教員は教科書のページを口頭で指示したり、自作した資料を元に授業を進めたりしている。

 「オンライン授業に際しどこまでが可能なのか校内で議論を深めた。それでも授業の題材が小説の一部や曲の鑑賞などの国語や音楽では苦労している」。同校の40代教諭は説明する。

 生徒と直接やりとりする授業は利用を生徒のみに制限。分散登校が始まった後も、登校しない生徒向けにオンラインで教室の授業を配信するなど新たな取り組みを試みる。

 ただ、意識が高いとみられる同校でも、直近にあった入学式のライブ配信では運営会社の「警告」を受けた。問題は生徒入場時のBGM。著作権者の許諾を問う内容だったという。

 「子どものためという大義名分も、われわれ教員の無理解で台無しになる。職員研修など授業以外のオンライン活用も計画しており、十分に留意したい」と教諭は話す。

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 著作権は、書籍、音楽、映像、アニメなどあらゆる著作物の作者が持つ権利。その利益を損なわないために他人が無断でコピーしたり、公開したりできないことが法で定められているが、営利目的でない学校の授業での利用は例外的に許諾を必要としていない。

 しかしオンライン授業に関しては、インターネットを通じて情報が拡散する恐れがあり、基本的に利用する教員が一つ一つ個別に許諾を得ることが求められていた。近年、学校での情報通信技術(ICT)の活用が広がる中、オンライン授業でも著作物を使いたいという現場の声が高まり、2018年の著作権法改正で無許可利用の範囲を拡大。海外の状況なども踏まえて有償だがオンラインでも許諾を得ずに利用できるようになった。

 文化庁著作権課は「これまでは教科書を映し、板書するだけでも許諾が必要だった。一定条件下であれば自由に使える代わりに補償金を支払う仕組みを整えた」と説明。改正法施行は、コロナ対応の一つとして当初予定の21年5月から今年4月に前倒しし、20年度に限っては無償とした。21年度以降の補償金は自治体など学校の設置者が支払う。

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 オンライン授業の充実に向けて国は本年度中に、小中学生1人に1台のタブレット端末配備を目指すなど動きを早める。比例するように、著作権課に相次いでいるのが全国の学校からの問い合わせだ。

 そのほとんどは「複製」の範囲や「授業」「必要と認められる限度」の考え方といった改正法の解釈に関すること。「既に公表されている内容ばかり。こちらのPR不足と言ってしまえばそれまでですが…」と担当者は苦笑する。

 コンピュータソフトウェア著作権協会専務理事で山口大知的財産センター特命教授の久保田裕さん(63)は、オンライン授業の「形」ばかりが先行するあり方を懸念する。

 「学校に情報を管理する専門家はおらず、現場任せの対応だと授業も形だけになる恐れがある」と指摘。そうしないために「そもそもオンライン授業で利用しようという情報はただではない。その価値や意味をきちんと学び直すことが、著作権の正しい理解につながるのでないか」と訴える。

 自らの作品が子どもの学びに役立てることを歓迎する著作権者は少なくない。「著作権とは、縛るものではなく守るもの」。そんな意識が学校現場に広がることを期待したい。

 (編集委員・前田英男)

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