「オンライン」ビジネスに生かせ 新規参入、事業拡大の好機に

西日本新聞 九州経済面 石田 剛

 新型コロナウイルス感染症の影響で急拡大する「オンライン」を駆使したビジネスに乗りだす地場企業が相次いでいる。感染防止に努めながら、経済を動かすため、政府は「新しい生活様式」を提唱。生活、経済活動の変化は、地方の中小、ベンチャー企業にとっても新規参入や事業拡大の好機になりそうだ。ただ、競争の激化は必至で、生き残りの工夫も欠かせない。

婚活イベント、場所の制約なし

 「真剣に、結婚を前提にお付き合いしてください」。5月下旬、熊本市の会社員男性(31)がパソコンに向かって言葉を振り絞った。画面には、オンラインでつながる東京の病院職員女性(43)の顔。「はい、よろしくお願いします」。こうして始まった2人の交際は順調に進展。今月19日、熊本市内で初めて直接会う予定だ。

 2人は、婚活支援に取り組むベンチャー企業LMO(エルモ)=福岡市=が開く「オンライン婚活パーティー」で知り合った。同社は婚活イベントがコロナの感染拡大によって開けなくなったため、新たにビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を利用した「婚活パーティー」と「飲み会」を企画。4月1日から毎日開催し、これまで延べ約千人が参加した。

 参加登録時に身分証明を徹底し、個別に連絡を取る際には事務局が助言しながらつなぐ態勢をとる。順調にカップルが生まれているという。男性は「場所の制約もなく、参加しやすいのが魅力。大勢が集まる場よりも表情や人柄が伝わりやすい面もある」と話す。

部屋探しも来店せずに完結

 熊本、鹿児島、福岡の3県で18店舗を展開する明和不動産(熊本市)は、賃貸住宅の仲介で「オンライン接客」を始めた。もともと手続きを電子化しており、ズームやテレビ電話で物件の情報を見られるようにして部屋探しから鍵の引き渡しまで来店しないで済むようにした。「遠方にいて来店しにくい人もいる。感染が収束してもニーズはある」と広報担当者。

 事業者向けのIT導入を支援するナップステクノロジーズ(福岡市)は、小売店や飲食店が「オンライン接客」をしやすいスマートフォンアプリを簡単に作れるサービスを6月から提供する。文字メッセージのチャットで個別に顧客とやりとりできるアプリが最短3回の工程で作れる。榎本友幸社長は「時価やオーダーメードの商品など、接客が前提で通販サイトでは販売しにくい店が使いやすい機能を考えた」と説明する。

 結婚式の「オンライン参列プラン」を用意したのは、福岡市などで神社を使った少人数挙式の支援サービスを手掛ける「和婚スタイル」だ。コロナの影響で挙式の延期やキャンセルが相次ぎ、家族や親族が参列しやすい方法を練った。スタッフが挙式の様子を動画撮影して中継する。運営会社デコルテ(兵庫県芦屋市)によると、問い合わせは堅調に増えているという。

課題はニーズの見極め

 緊急事態宣言が全面解除された後の5月26~27日、インターネットサービス事業者ビッグローブ(東京)が全国千人を対象に実施した意識調査では、コロナの感染拡大前と比較して自宅の外に出ることに「抵抗を感じる」と「やや感じる」と回答した割合は計72・4%に上った。感染終息後も価値観が「戻らない」「あまり戻らない」とした割合は計65・7%。オンラインの需要は一定程度、続くことがうかがえる。

 今後は、オンラインでの「伝え方」も重要になる。人事に関する研修やコンサルティングを行うアンビシャス(福岡市)は、オンライン専用の会議室とスタジオの貸し出しを始めた。高機能のウェブカメラや照明など専用機材を完備。面談や商品説明会、セミナーでの利用を見込む。「同じ内容でも撮影や音声で全く印象が違う」と月橋一浩社長は力を込める。週10件程度の利用獲得が目標だ。

 ただ、オンラインビジネスの競争環境は厳しい。「時間や場所の制約が少なくなる分、地域に根ざした強みが発揮しにくい面もある」と福岡市の経営コンサルティング会社幹部は話す。

 ITベンチャーを中心に投資するファンド運営会社エフベンチャーズ(同市)の両角将太代表パートナーは「多くの変化が起こっているときこそチャンスがある」としつつ、「コロナによる一時的なニーズか恒久的なニーズなのかを見極める力が必要」と指摘する。

(石田剛)

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