文化芸術は「不要不急」か 早稲田大教授・藤井慎太郎さん

西日本新聞 社会面 久 知邦

 新型コロナウイルスの感染拡大で、日本と欧州の文化芸術に対する考え方の違いが浮き彫りになった。

 ドイツの文化相は3月、「アーティストは生きる上で不可欠だ」と表明し、文化芸術分野を含む自営業者らに事業費約100万円の即時支援を約束し、安心感を与えた。

 フランスも収入が減少した個人事業者らに月に約18万円を支給。演劇や映画関係で働くフリーランスに失業手当を支給する平時からの制度の要件も緩和し、受給期間が来夏まで延長された。

 自粛要請が続いた日本では同時期、安倍晋三首相が「文化、芸術、スポーツの灯が消えてしまってはもう一度復活させるのは大変だというのは承知している。ただ税金で損失を補填(ほてん)することは難しい」と発言、関係者を失望させた。

 こうした対応への批判や窮状を訴える関係者の働き掛けを受け、4月に成立した補正予算には個人事業者に最大100万円を支援する持続化給付金が盛り込まれた。芸術分野に多いフリーランスも含まれ、金額も他国に見劣りはしないが、支援から漏れる層がないか注視する必要がある。

公的支援考え直す機会に

 自粛が求められる中、「不要不急」という言葉が文化や芸術に向けられた。インターネット上では「道楽を税金で支援しなくてよい」との意見もある。商業的なエンターテインメントと混同され、一部の人のための「娯楽」と捉えられていると感じる。

 欧州では文化芸術は公共のものだとされる。教育や福祉、医療と同様、「みんなのためのもの」は公的制度で支える考えが根付いている。文化相の発言も平時からの文化支援もこの考えに基づく。

 文化振興のための公的助成の方法にも違いが現れている。欧州では、主要団体への助成金は家賃や人件費に充てることができる。一方、日本の文化振興策はイベント開催に伴う事業費の助成が中心で、家賃や人件費などの固定費にはまず使えない。

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 12日に成立した第2次補正予算には、フリーランス向けの追加支援など560億円の文化芸術支援も盛り込まれた。全産業向けの家賃補助も、固定費負担に苦しんでいた組織には救いとなろう。だが、自粛の長期化で団体・個人の苦境は深まっており楽観を許さない。

 「Go To キャンペーン」は舞台公演やコンサートも支援対象となる。密を避けるための入場者数制限による収入減を国や自治体が支援する仕組みがあれば、さらに大きな助けとなる。

 自粛生活で文学や音楽、映画が人生に彩りや喜び、癒やしをもたらしてくれると実感した人は多いだろう。危機は自らを見直す好機でもある。テレワークの推進など働き方の効率化にもつながったように、芸術文化の重要性やより良い公的支援のあり方についても考え直すきっかけとしてほしい。

(聞き手は久知邦)

◆藤井慎太郎氏(ふじい・しんたろう) 1971年、福島県生まれ。専門は演劇学。2010年から早稲田大文学学術院教授。フランスでの研究経験も豊富で、新型コロナウイルス感染拡大後に欧州各国の文化支援策を調査した。

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