「消費するだけ」ではなく…福岡映画部代表がコロナ後へ見据えるもの

西日本新聞 文化面 諏訪部 真

コロナ禍を生きる

 映画館への休業要請が解除され、シネコンやミニシアターが再開した。緊急事態宣言が出た4月上旬に比べ、関係者の絶望的な観測は改善に向かいつつある。だが、「コロナ前」と同じでもない。当たり前だった映画を映画館で楽しむ慣行が、ウイルスによって簡単に揺るがされることに、私たちは気づいてしまった。

 当事者である監督らが劇場支援のクラウドファンディングなどを立ち上げる中、福岡の映画文化を盛り上げようと2017年12月から活動する「福岡映画部」代表の石渡麻美(いしわたり・あさみ)さん(30)は、ファンの目線で何ができるかを考え続ける。

 「映画を守るためにファンとしてできることは、1本の作品を大切に、全力で楽しむことに尽きる」

 新作公開の延期や映画館の休業など、業界全体の危機を前にそう考えた。ただ作品を「消費」して終わるのではなく、少し踏み込んだファンが受け手としていれば、映画文化が廃れることはないはずだ。

 「映画は見方に気付けばもっと楽しくなる。エンターテインメントとして楽しむことも肯定しつつ、その先にある『見方』や『楽しみ方』を多くの人に広げていきたい」

   ◇   ◇

 5月の大型連休、オンラインで「バーチャルシネマサロン」を計3回打った。SNSで参加者を募り、指定の作品を同時視聴。その後、ビデオ会議ツールで映画談議を繰り広げた。取り上げたのは「ブロードウェイ・メロディー」「ロッキー」「ムーンライト」。いずれも米アカデミー賞作品賞受賞作で、石渡さんは米社会と作品との関係をトピックに話題を展開した。昔の作品でも、歴史と照らし合わせるなど切り口を変えることで違う楽しみに出合える。映画館に行けない中、そんな魅力を再確認した。

 石渡さんは5年ほど前、仕事で挫折を味わい、浮かない日々を送った。薄暗いアパートの一室で、知人に薦められたDVDをひたすら見る。その中の1本に「桐島、部活やめるってよ」(2012年)があった。主演神木隆之介を中心に、人気の若手俳優を多く起用したヒット作は、各登場人物の視点を通じて学園生活を描き、「スクールカースト」とも呼ばれる若者の格差をあぶり出す。

 「まあまあ面白い学園もの」。ざっくりした感想しかなかった石渡さんは、ラジオで「桐島-」評を聞いてから、深い世界に引き込まれた。映画を話のネタに社会問題にまで広げて熱く盛り上がる語り手たち。

 「私は一体何を見てきたのだろうと、感性が開眼するのと同時に絶望もした」。もっと早く、楽しみ方を知っていれば。そこから、人気作を見て消費するだけだった姿勢が一変する。

 「映画の沼に足を取られた」。過去に見たものを見返し、関連書籍を読んだ。映画を学びたい、仕事にしたい。思いを募らせ「映画部」を始めた。観客を集めて、上映会とトークをセットにしたイベントを中心に企画してきた。

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 気になった現象がある。

 新型コロナ感染拡大で映画業界は、「下流」の映画館が休業する前に「上流」の大手配給会社からの新作供給がストップした。まだ休業要請が出ていなかった春先、シネコンは旧作中心の上映プログラムを組み、一時的に各地のシネコンが「名画座化」したのだ。

 「各シネコンで、もう少しかける作品のバランスを変えることができるのでは、と思いました」

 話題の新作上映は利益を考えれば当然である。だがファン目線では、誰もが楽しめるエンタメ大作から、静かに訴え掛けるドキュメンタリー、もう一度見たい名画まで、幅広く選択できる方がありがたい。

 今、座席を減らすなどの対策を取った映画館が再び観客を迎える。「名画座」に近い状態での営業はしばらく続きそうだが、これは好機にもなりうる。映画との付き合い方は人それぞれであることを前提とした上で、石渡さんは言う。

 「観客であり消費者である私たちが、ただ『消費するだけ』ではなく、ちょっと向き合い方を考えることも必要ではないか」

 思えば自身が「足を取られた」のはなぜだったか。

 「好きで仕方ないものに出合えば『どうして今まで知らずにいたのだろう。もったいない』と思うのは自然。それは映画に限ったことではないですよね」

 テレビでは新番組が放送延期になり、夏の野外フェスや、大規模な美術展も中止が相次ぐ。映画を含む商品やコンテンツの供給スピードは緩やかになった。ならば、今までと同じ感覚で新しいものを求め続けるのではなく、すでにあるものをじっくり愛(め)でよう。それが「コロナ後」の精神なのかもしれない。

(諏訪部真)

◆福岡映画部のホームページ=https://fukuokaeigabu.com/=では、福岡県内の映画館再開状況や、各館で上映予定の作品リストを紹介している。

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