晴れ舞台は消えたけど…高3オンライン座談会【#最後の夏残したい!】

西日本新聞 スポーツ面 前田 泰子 伊藤 瀬里加

 新型コロナウイルス感染拡大で夏の甲子園や全国総体が中止になり、スポーツに取り組む高校生の多くは全国大会につながる最後の晴れ舞台がなくなった。誰も経験したことがない事態に直面する当事者たちはこの状況をどう受け止めているのか。オンライン座談会を実施し、これまでなかなか表に出てこなかった高校3年生のリアルな声を聞いた。

※出席者は、Aさん=バレーボール部、女子、競技歴6年。Bさん=野球部、男子、競技歴10年。Cさん=バドミントン部、女子、競技歴9年。Dさん=野球部、男子、競技歴10年。(いずれも九州の高校)

泣いた。「こんな主将でごめん」

 -高校生の全国大会は春に続いて夏も軒並み中止になった。

 B(野球) 信じるしかなかった。みんなで部室にいた時に中止を知ったんですが、ショックでした。泣くというかみんな叫んでいた。本気で甲子園を目指して、今まできついことを乗り越えてきたので。

 A(バレーボール) 私はそこまで全国を狙っていたわけではないけど、今まで競技をやった集大成というか、自分の思いをぶつける場所がなくなりました。仲間と頑張ってきたことを保護者の方にも見せられずショックでした。

 C(バドミントン) 室内競技なので難しいと思って覚悟して練習していました。全国総体に出るために3年間頑張ってきたので、目標がなくなって残念でした。

 D(野球) 覚悟していましたが、いざ中止となるとすぐには切り替えられなかった。甲子園がなくなってどこを目標にしていいか分からず前を向けませんでした。

 -今、練習はしているのですか?

 C 緊急事態宣言解除後は1日に2時間。体育館の窓をずっと開けて練習しています。

 A 6月1日で引退しました。もともと私の学校は春高(1月開催の全日本高校選手権、秋に県予選)まで残る3年生はいません。大学は勉強で行くというチームです。推薦入試を受けるには学内の選考のためのテストを受けなくてはいけない。先生に「代替大会も企画されているが、みんなの意思に任せる」と言われたけど、受験勉強があるため部活を続けている3年生はいません。

 -そういう終わり方をどう思っていますか。

 A 3年生全員で集まったことがあったけど、みんな号泣でした。何でこんな終わりなんだって。主将も「こんな主将でごめん」って言ってみんなで号泣した。どこにもぶつけられない悔しさがありました。

「野球だけ特別」は違う。一緒だ

 -競技を続けている人は目標をどこに置いて練習していますか。

 D 代替の大会が行われることが決まったんですが、今までのモチベーションでいくのは難しかった。みんなで話し合いながら「このチームでやってきた以上はいい雰囲気で終わらせよう」となったんです。中止が決まった時はフワフワしていたけど、今は活気ある練習をしています。

 B 監督からは「勉強に切り替える人は遠慮なく言ってほしい」と言われているけど、3年生はみんな残っています。でも、中には勉強したいって思っているやつもいると思います。

 D 甲子園にはつながらないけど、何もなく終わってしまうのは中途半端になるので、大会をやらせてもらえるのはよかった。

 -大会が中止されたことについて、周囲から声を掛けられましたか。

 A 「この経験が将来の役に立つ」とか先生は言うけど、今はめちゃくちゃ悔しいからその言葉で納得いくわけじゃないです。

 -ネット上でもいろいろな意見が出ていた。

 A それぞれ高校生のために言われているんだろうけど誹謗(ひぼう)中傷みたいになっている意見を見るとそっちの方が悲しい。いろいろ言われても変わらないものは変わらないし、第三者の方々の意見に傷つくことがありました。

 -野球だけ特別扱いされているといった意見も多く見かけた。

 B 野球だけ大きく取り上げられるので仕方ない。ネットでそういう意見を見ると時々イラっとするけど、誰もがそう思っているわけではないと思っています。

 C みんなやってきたことは一緒。野球だけというのは違うと思います。甲子園もやってほしかった。

冬の選手権は「自分たちの分も」

 -他の部活動の友達と話をしましたか。

 C 「インターハイ、なくなったね」と話しました。でもバレーボールやサッカーは冬に選手権がある。自分たちの分も頑張ってほしい。

 D すでにほかの部では引退している人もいます。クラスにはサッカー部の友達がいて「目指してきたものがなくなって悔しいね」と話しました。野球部は全国大会がなくなったけど、サッカー部には頑張って冬の選手権で全国へ行ってほしい。「そのときは応援に行くから」と話しています。

 -Aさんは競技を引退して大学受験に切り替えました。他の3人は進路についてどのように考えていますか。

 C バドミントンで大学に行きたいと考えています。高校から実業団に行く選手がいるけど、今年はコロナの影響で日本代表クラスの高校生しか採らないという話が出ています。それ以外の実力のある子が大学に行くので、大学の枠がどんどんなくなってきて、バドミントンの強いところには行きにくいかなと思っています。

 B 自分は進学先を具体的には決めていないけど、指定校推薦で関西方面の大学に行ければいいなと思っています。うちの高校は勉強で進学する人がほとんど。指定校推薦を狙っている人はテストの点数が大事になるので、代替大会があったらテストの勉強をできるかどうか…。「実力テストに(日程が)かぶる」とか「練習試合があったら出ないといけないね」とか、そういう話はしています。

 D 自分は野球は高校までと決めていて、就職するつもり。高校で野球をやめようと考えたのは3年生になる前ぐらい。迷った時期もあったけど、就職に決めました。うち(の高校)は卒業後も野球を続ける人がほとんど。すでに進路が決まっている人もいます。

 -野球を続けずに進路を探す人もいますか?

 B 部員の中に一人、アメフトに転向しようとしている選手がいます。大学のセレクションを受けようとしたらコロナの影響で中止になって、進路を一から考え直さないといけなくなっている。アメフトのボールを買って、投げる練習もしていたのになくなってしまい迷っていました。

 -競技を続けてきて良かった、このチームでプレーできて良かったと思うことはありますか。

 D どこよりも質の高い野球をやれていると自信を持ってプレーできていることです。

 A 部活に入っていないと得られないものがあると思います。同じつらさを体験して、勝ったとか、こういうことができたとか、同じうれしさを共有できた。それは部活をしていて良かったことだなと思います。

(取材・構成=前田泰子、伊藤瀬里加)

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 中学と高校の3年生が目標としてきた「最後の夏」。スポーツや文化活動の大会中止が相次ぐ今、西日本新聞「あなたの特命取材班」は、皆さんの思いや取り組みを募集して伝える「#最後の夏残したい!」プロジェクトを始めました。周囲で支えた方々もメッセージをお寄せください。全国の地方紙と連携してお伝えします。

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