譲らぬ米中、緩和見えず トランプ氏、選挙控え強硬姿勢 習指導部、香港安全法制急ぐ

西日本新聞 国際面 田中 伸幸 川原田 健雄

 【ワシントン田中伸幸、北京・川原田健雄】ハワイで会談した米中外交トップは、新型コロナウイルス対応や香港情勢を巡り両国の対立が深まる中、緊張緩和の糸口を模索した。しかし、会談の傍らでトランプ大統領は中国のウイグル族弾圧に制裁を科す法案に署名し、圧力を強化。中国も香港に導入する国家安全法制の審議を始め、譲らない姿勢を示した。関係改善の道筋はなお見えない。

 ポンペオ米国務長官と楊潔〓共産党政治局員による会談は、ハワイの米軍基地内で開催。国際的な注目を避けるように記者の同行は認められなかった。

 米中両政府やメディアによると、ポンペオ氏が「通商、安全保障、外交に関して互恵的な取引の必要性」を指摘。楊氏が「中米双方が防疫協力を強化し、世界の公共衛生安全に貢献すべきだ」と呼び掛けるなど、融和を探る動きもあったが、米側が問題視する香港やウイグル問題などについては、楊氏が中国の正当性を強調。双方の溝の深さをうかがわせた。

 会談が行われたこの日、トランプ氏はウイグル族弾圧に関わった中国当局者に制裁を科す「ウイグル人権法案」に署名し、法を成立させた。米国が議長国を務める先進7カ国(G7)の外相も17日、香港への国家安全法制導入に対し「重大な懸念」を示す声明を発表し、中国をけん制した。

 会談に合わせるように攻勢を仕掛けた背景には、11月に大統領選を控えるトランプ氏の再選戦略がある。有権者受けの良い「中国たたき」で、景気悪化や人種差別抗議デモなどで高まる自身への批判をかわす狙いだ。「私ほど中国に厳しく対処した大統領はいない」。トランプ氏は17日夜、保守系のテレビ番組に電話出演し、アピールした。

 ただ、こうした強硬姿勢を「見かけ倒し」とする見方もある。米中の緊張が一層高まれば、貿易協議の合意第1弾で決まった「米農産品の対中輸出増加」が滞り、農業票に影響しかねない。このため、トランプ氏は派手な中国批判を口にしつつ、経済再生には打撃を与えないよう、決定的な対立を回避する方策を模索しているとの見立てだ。

 17日には、ボルトン前大統領補佐官が出版予定の著書に、トランプ氏が中国の習近平国家主席に異例の再選支援を要請していたとの内容が含まれていることが判明。政府高官は否定したものの、テレビに電話出演したトランプ氏は多くを語らなかった。

 完全決裂を望まないのは中国も同じだ。新型コロナの影響で経済の冷え込みは深刻。感染拡大によって世界的に需要が低迷する中、貿易摩擦を抱える米国との対立激化は避けたい。米国が打ち出した関税など香港への優遇措置撤回も実行されれば、大きな痛手だ。

 ただ、習近平指導部にとって香港問題は領土や主権を巡る「核心的利益」。弱腰の対応は見せられない。9月の香港立法会(議員)選挙で、民主派が圧勝すれば再び市民の抗議活動が勢いづきかねない。このため7月にも国家安全法制の関連法を制定し、中国に批判的な民主派の動きを封じたい考えだ。

※〓は「竹かんむり」に「后」の「一口」部分が「虎」

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