「友達とつながれた」オンライン講座、8家族の取り組み 

西日本新聞 下崎 千加

8家族が16回 会えない時間つなぐ

 新型コロナウイルスによる休校中、学ぶ場を失った子どもたちのために福岡市の8家族が協力して「オンライン講座」を開いた。初めは親が先生役を務めていたが、子どもたちが次々手を挙げ、6月上旬までに算数、理科実験、工作など計16講座を終えた。「友達と会えなくてもつながれた」。この1カ月間の手応えやノウハウを聞いた。

 「今から出欠を取ります。〇〇さん」「はい」。5月30日午前9時、パソコン画面にはそれぞれ家にいる8人の顔が映し出された。当番の子どもが名前を呼ぶと、1人ずつ返事。13回目の講座が始まった。

 テーマは「プログラムって?」。先生は父親の一人で技術職の石井敏文さん(57)。資料を画面に映しながら、コンピューターの計算や指令の仕組みを説明していく。「なんでダイアグラムっていう名前なの?」「えっと…今度までに調べておくね」。直球の質問にたじたじだ。予定の30分を超えて10時に終わった。

 尾関宥治郎さん(8)は「友達の顔が見えるし、いろんな話もできる」と楽しみな様子。先生役で割り算の解き方を説明したこともある中島聡太さん(8)は「教えるのって難しい。今度は物を作る講座をしたい」と意欲的だ。学校が始まったため、今後は月1回のペースで週末に開くという。

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 8人は保育所時代の幼なじみで、五つの小学校に通う3年生。今でも毎年夏には家族ぐるみでキャンプに行くような気安い仲が、決め手となった。

 呼び掛けたのは、聡太さんの母で臨床心理士の中島美鈴さん(42)。コロナで仕事が休みになり、親子でずっと家にいると、会話が減っていった。5月上旬まで新しい教科書も届かず、学習面の遅れも心配に。相談すると、他の親も在宅勤務が増え、同じように悩んでいたことから話がとんとん拍子に進んだ。

 活用したのは、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」。使うのは初めてだったが、なんとか習得して5月6日に初開催。楽しく体を動かしてほしいと、母親の一人が、テレビで子どもたちになじみがある「アルゴリズム体操」を教えた。以降「9月入学どう思う?」「お小遣い帳の付け方」「水の実験」などのテーマで数日に一回開いた。予備校講師、税理士事務所勤務など親の多彩な職業が役立った。16回のうち、工作の「磁石迷路」「サンドアート」など5回は、子ども自ら企画し先生役を買って出て、好評だった。

 ホテル勤務を生かし「マナー講座」を担当した宥治郎さんの母、尾関雅子さん(37)は振り返る。「生活リズムが乱れていたけど、講座が始まったおかげで、一日にめりはりが付くようになった。親が付き添わなくても、一人でパソコンを扱えるようにもなりました」

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 休校中はネットやテレビで遠隔授業をする教育委員会や塾があったが、受け身になって集中力が続かない子どももいた。今回の取り組みでは先生役は友達や親で、意見を求められるなどやりとりもあり、楽しそうだ。「手作り感満載で失敗もあるけど、お友達の発表も刺激になったりして、やる気が湧くみたい。コロナの第2波が来ないとも限らず、協働的な新しい学びの場としてお勧めです」と中島さん。

 とはいえ先生役は資料作りが大変だ。気疲れも本末転倒。(1)親子とも気心が知れた仲(2)親の在宅時間が似ている(3)親がLINE(ライン)などで連絡が取りやすい(4)参加は自由(5)非公開-が大切なポイントという。参加を仲間うちに限っているからこそ、親も子も安心して意見を言い合え、楽しく学び合える。

 「ただ、講座として成立するのは思春期前の小4くらいまで」と中島さんは言う。知人の小5の娘が同級生と行ったときは、親の関わりを嫌がって講座形式にならず、単なる“おしゃべり会”になった。「それもストレス解消になっていい。子どもの自主性に任せるのが一番」と話している。 (下崎千加)

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