「うれしくて涙が出る」久々の観光客に笑顔少しずつ 移動自粛解禁

 都道府県をまたぐ移動の自粛要請が19日、全面解除された。JR九州は在来線特急を通常ダイヤに戻し、ほぼ全ての観光列車が運行を再開、九州の観光地では新型コロナウイルス感染防止策を徹底して県外客らを受け入れた。日常を取り戻す動きが徐々に広がる。

 熊本県人吉市のJR人吉駅。正午すぎに観光列車のSL人吉が汽笛を鳴らしながら姿を見せると、法被姿の旅館関係者や観光協会職員ら約30人が、小旗を振りながら「お帰りなさい」と歓迎した。

 運行は約2カ月ぶり。旅館おかみでつくる「さくら会」の有村政代会長(69)は「うれしくて涙が出る思い。観光客が減って気持ちが沈みがちだったけれど、SLの煙に元気をもらいました」。家族4人で初めて乗車した福岡県久留米市の会社員長田浩二さん(36)は「家で過ごすことが多かったので、子どもたちも大喜び。少しずつ旅先を広げていきたい」と話した。

 JR九州によると、19日の観光列車の乗車率は10%台。旅行需要の回復を見込んで7~9月のお盆期間や連休には特急の臨時列車を計3406本走らせる。

 長崎県在住者限定で営業していた同県佐世保市のハウステンボス(HTB)は2カ月半ぶりに県外客の受け入れを始めた。ほぼ休止していたアトラクションは7割が再開。観覧車では客が降りた後、シートや手すりを消毒し、換気のため客を乗せずに1周させた。

 佐賀県伊万里市の30代のカップルは「やっと来られた。消毒や検温を徹底しているので安心です。園内は広いので、人とも距離が取れる」と久々の散策を楽しんでいた。

北九州市の休業要請も解除

 一方、感染が再拡大した北九州市で19日、接待を伴う飲食店やライブハウスを対象に継続していた福岡県の休業要請が解除された。

 小倉北区のジャズライブハウス「BIG BAND(ビッグバンド)」は約2カ月ぶりに店を開けた。田部俊彦オーナー(65)は「常連客の応援もあって、何とか踏ん張ってきた」。当面はバーのみの営業で、店内でのライブは7月以降になる見通しだ。

 密集を避けるため、席数を以前から半減させ、ライブの客も15人程度に限定する予定。田部オーナーは「何とか演奏の場を提供したい。たくさんお客さんを入れたいのはやまやまだが、感染を怖がる人もいるかもしれず、手放しでは喜べない状況だ」と複雑な様子だった。 (中村太郎、布谷真基、宮崎省三、山下航)

羽田空港にぎわう

 全都道府県境をまたぐ移動が解禁され、羽田空港では19日、運休路線の再開が相次ぎ、帰省や出張の利用客でにぎわった。

 東京に単身赴任中で3カ月ぶりに福岡県筑紫野市の自宅に戻るという会社員南好昭さん(48)は「帰りたい気持ちを我慢してきた。久しぶりに家族で食事に出かけたい」と笑顔。神奈川県の男性会社員(39)は、妻と1月に生まれた長男と佐賀市の実家に帰るといい「両親にはリモートで子どもの顔を見せてきたが、ようやく対面させられる」とうれしそうだった。

 この日、スカイマークは運休していた長崎-羽田、鹿児島-中部などを再開。格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションは福岡-札幌や長崎-成田など、ジェットスター・ジャパンは福岡-中部などを再開した。

 感染防止にも余念がない。全日空は乗客同士の接触を防ぐため、乗客を座席によってグループに分け、順番に搭乗してもらう手順を導入。担当者は「乗客は5月の3~4倍に増えている。感染予防を徹底したい」と話した。 (森井徹)

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