朝鮮半島の緊張 挑発で苦境は打開できぬ

西日本新聞 オピニオン面

 朝鮮半島情勢がまた緊迫している。北朝鮮が軍事的圧力で揺さぶり譲歩を迫る「瀬戸際外交」を仕掛けているからだ。北朝鮮は無謀な挑発をやめ、対話の道へ戻らなければならない。

 北朝鮮が南西部・開城(ケソン)の南北共同連絡事務所を爆破した。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が2018年4月の会談で設置を決めた、南北融和を象徴する施設だ。

 脱北者団体による大型風船を使った北朝鮮の体制批判ビラの散布と、それを許した韓国政府に対する報復だという。

 ビラ散布の中止は首脳会談で合意していたが、その後も続いていた。北朝鮮がここにきてあえて問題視するのは、国際社会の制裁に加え、新型コロナウイルス対策でいち早く中国との国境を封鎖して貿易量が激減し、国内経済の著しい悪化を招いたからだろう。

 正恩氏はトランプ米大統領と会談を重ねてきたが、制裁解除には至らないままだ。文氏から取り付けた経済協力も国連制裁の壁に阻まれ、ほとんど実現していない。対話から強硬姿勢に転じた背景には国内にくすぶる不満をそらし、韓国の支援を引き出す狙いが透けて見える。

 北朝鮮は事務所爆破を「関係の総破綻を予告する前奏曲」と例え、南北境界付近で軍を増強する方針を表明した。

 だが、そもそも制裁が緩和されないのは、国際社会が求める非核化に応じていないからだ。そればかりか、ミサイル発射を繰り返し、その能力向上を誇示している。関係国にとっては過去、経済支援が結果的に核・ミサイル開発に使われてきたという疑念を拭えない以上、厳しい対応を取らざるを得ない。

 北朝鮮が南北首脳会談の合意が履行されていないと主張しようと、それは独善的な理屈にすぎない。挑発では苦境を打開できないと認識を改めるべきだ。

 韓国は次の敵対行為には「必ず対価を払うことになる」とくぎを刺した。ただ、事態の沈静化に向けた特使派遣を北朝鮮に打診するなど文政権は対話重視を維持する意向のようだ。

 朝鮮戦争によって民族が長年分断されている苦しみや融和を望む心情は理解できる。それでも、ここで韓国が安易に譲歩すれば一時的に状況が改善しても挑発が繰り返されるのは目に見えている。文政権は北朝鮮の非核化を重視する関係国と足並みをそろえて対処してほしい。

 正恩氏の妹、金与正(キムヨジョン)党第1副部長が急速に存在感を増している。最近、対南政策を統括する立場に就き、事務所破壊も予告していた。金正恩体制内に何らかの異変が生じてはいないか。この点でも警戒を怠れない。

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