受験への焦り やり遂げたい気持ちと交錯 飯塚市・嘉穂高

西日本新聞 筑豊版 丸田 みずほ

コロナと部活 吹奏楽の現場から

 部活が再開した6月上旬、チューバ担当で嘉穂高吹奏楽部の部長、古川拓海さん(17)は3年生11人を教室に集め、こう呼び掛けた。「勉強もあるかもしれないけど、メリハリをつけて頑張ろう」。部長がげきを飛ばした2週間後、練習場のホールから楽器を持って外に出てきた部員たちの表情は、心なしかさえない。

 「今はみんな9月の定期演奏会(定演)に向かって頑張っている。受験もあるのにすごいなあ」。コントラバス担当の仲濱顕太郎さん(17)が、黙々と個人練習に励む他の吹奏楽部員を遠目に見ながら言った。

 同校は午前7時半から朝課外が始まる進学校。3年生は、新型コロナウイルスで約3カ月休校が続いた今年も例年通りにやってくる受験に焦りが募る。仲濱さんは、大会が中止となり既に引退した運動部の友人と比べ、勉強時間に差が出ているのが気がかりという。

 相次ぐ演奏会の中止や勉強への不安から、休校中に「少しずつ部活から気持ちが離れていった」という仲濱さん。ただ、演奏会がなくなった今、「本番でのお客さんの拍手が心地よくて部活を続けてきた」としみじみ思う。最後の定演となる今年、友人や先生からは、会う度に「見に行くからね」と言われる。部活をやり遂げたい気持ちと勉強への不安が交錯している。

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 トロンボーン担当の白金恵さん(18)は学校再開後、3カ月ぶりに部員と再会したとき、学校生活の大部分を共に過ごしてきた仲間だけに「不思議と久しぶりな感じがしなかった」と笑う。

 最近は昼休みも勉強に充てており、練習中も頭の片隅から勉強が消えない。一方、3年生になって一度も舞台に立てていない不安はある。「誰かに演奏を聞いてほしい。準備期間が長くなったと思って頑張ろう」。白金さんは、3カ月先の定演に向け気持ちを切り替え、楽器を吹き続ける。

 勉強の遅れや受験という現実が突きつけられている今、古川さんは「正直、みんなの心が部活に戻っているのか心配」と明かす。部活のモチベーションをどう保ち、勉強と両立させるのか。部員は悩み続ける。

 そんな中、同部は7月上旬、新たな取り組みに挑戦する。定演でも毎年おなじみの「炭坑節」をリモート演奏で収録し、映像を同校の文化祭で披露するという。仲間と久しぶりに作品を作り上げることになり、古川さんは「テンポを合わせるのが難しそう。どんな仕上がりになるのかな」と想像を膨らませながら、「とにかくみんなに笑ってほしいなあ」と願うようにつぶやいた。 (丸田みずほ)

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