「復活の日」二つの傑作 大串誠寿

西日本新聞 オピニオン面

 56年前の小説だが、小松左京氏の「復活の日」は長く読み継がれている。コロナ禍に重なるパンデミックへの洞察で昨今、高く再評価される。

 この小説は1964年、早川書房「日本SFシリーズ」第1巻に書き下ろされ、72年にハードカバー新装版として再刊された。その際、イラストレーター生頼範義(おおらいのりよし)氏の絵が表紙を飾った。ミケランジェロの彫刻「瀕死(ひんし)の奴隷」を援用し、小説の作品世界を表現した。質の高さに感動した小松氏は以後、60冊以上の自著の表紙を生頼氏の絵で飾るが、「復活の日」の表紙画はその原点となった。

 生頼氏は東京芸術大で油彩を学んだ後、群を抜く描写力で書籍や映画関係のビジュアル制作に携わった。「復活の日」の表紙画を手掛けた翌年、東京から宮崎市郊外に居を移し、2015年に亡くなるまで約40年にわたり同地から世界に向けて作品を送り続けた。森羅万象を表す画力はトップレベル。ジョージ・ルーカス監督が雑誌で見た生頼氏の絵に衝撃を受け「スターウォーズ・帝国の逆襲」の国際版ポスター作画を依頼した話は広く知られる。

 「復活の日」は80年、角川映画として米国などと協力して映像化された。生頼氏はそこで主要場面の構想画制作に携わる。25枚に上る迫真のイラストは米国側スタッフのイメージ喚起に大いに寄与したという。当時、角川書店が出版していた文庫版「復活の日」は映画公開を前に改装され、表紙には生頼氏の描いた映画用構想画が用いられた。

 現在「復活の日」はハードカバー版が早川書房から、文庫版が角川文庫などから出版されている。出版経緯は異なるにもかかわらず、早川版、角川版いずれも生頼氏の絵を表紙に掲げる。

 生頼氏の作品を保管・整理するみやざきアートセンター(宮崎市)の長岡政己センター長(56)は「生頼氏は完璧主義者。印刷が終了して返却された作品に加筆した例もある」と語る。厳格な構図の二つの表紙画からはその気迫が伝わってくる。

 書籍が長命を保つのは小説が傑作たる証明だ。同時に40年以上を経た今も書架を飾る表紙画も、その事実で自らの傑作を証明している。

 (写真デザイン部次長)

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