「スリット式砂防ダム」九州に続々 流木や土石受け止め、流域守る

西日本新聞 くらし面 長谷川 彰

 福岡県朝倉市などを襲った九州豪雨から間もなく3年。大量の流木が川をせき止めて被害を広げた様子は記憶に新しい。こうした流木や大きな土石を受け止めつつ水を下流に通し、激流の制御を狙うのがスリット式の砂防ダムだ。九州でも設置された場所は多い。どれほどの効果が期待できるのだろうか。

 霧島火山の一つ、新燃(しんもえ)岳の西側に位置する宮崎県高原町で今年1月、防災啓発イベントがあり、国土交通省宮崎河川国道事務所の協力で、いくつかの砂防ダムがお披露目された。

 一つは御池川のスリット式砂防ダム。行政用語では透過型砂防堰堤(えんてい)と呼ばれるダムの一種で、鋼製の柱で柵をこしらえた構造になっている。

 ふだんは水も土砂も下流に流れていくが、豪雨時に上流で土石流が発生した場合、大きな岩や流木はこの柵に引っ掛かり、水や小さな土砂は流れ下る。

 スリットがない不透過型のダムでも岩や流木は受け止められるが、大量の水もせき止められ、脇からあふれ出て周辺に被害を及ぼしてしまう。スリット式は、これを防げるため、民家などが比較的に近い場所に設置すると効果的だという。

 蒲牟田川には、少し小型の流木捕捉工と呼ばれるスリット式の設備も採用されていた。

 さらに下流域ではコンクリート製のダム本体にスリットが設けられていた。上流部で大きな土石や流木を止められていることを前提に、ここでは一定の貯水機能を果たしながら下流の水量をコントロールする。

 小さな土砂まで完全にせき止めると、川下の河川環境に影響が出るため、必要最小限の土砂は通す工夫がなされているという。

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 九州地方整備局河川工事課によると、スリット式砂防ダムは、九州北部を横断して各地に甚大な風倒木被害をもたらした1991年台風19号を受け、整備が進むようになった。

 被災後の復旧事業で採用されることが多く、今のところ九州で効果が明白に実証された例は見当たらないという。ただ、2013年台風26号の際、東京・伊豆大島で土石流が発生した際、大金沢本川に設置されていたスリット式ダムが大量の土石と流木を受け止めて下流を守った事例がある。

 新燃岳周辺の施設は、11年1月以降の噴火を踏まえ予防的に建設された、前向きな取り組みだ。同河川工事課は「これからも流木被害などが予想される場所のうち、効果が高そうな所で採用していく」と説明。一方で「ハード事業が万能ではないのも現実。砂防施設があれば避難時間を稼げるので、早めの避難を促すソフト対策を併せた総合防災が大切だ」と話している。

(特別編集委員・長谷川彰)

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