九州北部豪雨3年 孤立する被災者、「仮設」出た後の見守りこそ大事

西日本新聞 くらし面

新局面 災害の時代―後悔しない備え⑰

 あの2017年九州北部豪雨から3年の節目、7月5日が近づいてきました。仮設住宅は2年で閉鎖されました。災害公営住宅や親戚宅をはじめ、新天地にそれぞれ移られた方々が、新しい生活になれて、安心して暮らしておられることを願ってやみません。

 私の九大の講義では毎年福岡県朝倉市で、被災された方々に協力いただき被災地実習を行ってきました。杷木林田地区の「みんなの集会所」で、学生がこれだと考える非常食を持参し、みなさんに被災現場で望ましいかなど投票と講評をしてもらい、茶話会で締めくくります。九死に一生を得た方の教訓を直接伺うことこそ最大の学びなのです。

 18年の茶話会の時、「9カ月たって今回初めてご近所の人とお話しした」と打ち明けてくださった高齢のご婦人がおられました。

 当地は、16年熊本地震の益城テクノ団地の仮設住宅より戸数が少なくコンパクトで、一見みなさん声を掛け合っているような印象でした。自治体も元の近所同士となるよう入居を配慮していました。

 熊本地震を機に発足した九州建築学生仮設住宅環境改善プロジェクト(通称KASEI)は、九大では九州北部豪雨の際に建築家の末廣香織准教授が先頭に立って、仮設住宅団地に「みんなの集会所」を設計し、建築学科の学生がそこを拠点に、住民の方々と庇(ひさし)を付け、花壇を作り、もちつきや竹灯籠をともした慰霊祭を催すなど活動してきました。それでも気後れして輪に入れない方もおられたのです。やはり向き合ってお一人ずつ話を聞いてみなければ分からないものだと改めて被災者の孤立を防ぐ難しさを痛感しました。

 今年は新型コロナウイルスの関係で朝倉市は追悼式典の中止を決めています。甚大な災害でしたが、この3年、豪雨が全国各地で相次ぎ、世間の九州北部豪雨への関心は薄れがちに思えます。だからこそ仮設住宅を出た後、新天地での孤立が生じていないか心配なのです。日本中が巣ごもりする中、今まで通りに見守りの方々が来られないようになり、心細い方もおられるはずです。

 災害復興住宅での孤独死は、既に阪神淡路大震災の時に顕在化し、東日本大震災でも仮設住宅(みなし施設は除く)と合わせて東北3県で493人(昨年末時点)に上ります。熊本地震は32人(22日現在)です。

 災害で長年住みなれた家を追われた方々が、新天地で新しい人間関係を築くのは至難の業です。災害国日本の社会は被災者をどう見守るのか、コロナ禍の今こそ本気で考えて取り組むべきです。苦難を生き抜かれた尊い命を皆で守っていかねばなりません。(九大准教授 杉本めぐみ)

 ◆備えのポイント 被災地の高齢者見守り活動の一つとして玄関先や軒先に、高齢者自身が元気だと知らせるため、日中に黄色い旗を掲げる「幸せの黄色い旗」運動が東日本大震災以降、広がっています。コロナ禍の中でも通用する新たな試みの提案を、ぜひお願いします。

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府生まれ。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て、2014年度から九州大助教、20年度から准教授(男女共同参画推進室)。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。在インドネシア日本国大使館経済班員として2004年スマトラ沖津波の復興と防災に携わる。「九州大学平成29年7月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」メンバーとして福岡県防災賞(知事賞)受賞。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。

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