「今度払う」無人駅で不正乗車相次ぐ JR九州は良心頼み…憤りも

西日本新聞 社会面 布谷 真基

 JR九州が鉄道事業合理化の一環で駅の無人化を進める中、定められた運賃を支払わずに客が乗降する不正乗車が相次いでいる。同社は複数の駅を無人化し、一括で遠隔管理できる「スマートサポートステーション(SSS)」を福岡都市圏など利用者が多い路線で増やしており、今後も不正乗車の横行が懸念される。

 SSSは駅に防犯カメラやインターホン、簡易改札機などを設置し、サポートセンターで管理する。2015年に初導入し、福岡県内の香椎線や筑豊線、大分市内の一部など乗降客数が多い都市部で相次いで取り入れ、5路線41駅に広がった。SSS導入駅を含む無人駅は、全568駅のうち304駅と半数超。10年度の無人駅は237駅。当時は有人駅の方が多かったが、10年間で逆転した。

 6月の平日夜、SSSが導入されている福岡県内の無人駅。列車を降りた人が一斉に出口に向かう。ICカードを簡易改札機にかざすこともなく、切符を回収箱に入れることもなく改札口を通過する人が便ごとに複数いた。このうち、中年男性客に話を聞こうとしたが無言で立ち去った。

 無人駅での支払い方法は(1)ICカード(2)切符(3)旧型の磁気定期券-の3種類ある。別路線の無人駅では、切符を買わずにホームに入った高齢男性を追ったところ7駅先の無人駅で降車。そのまま駅外へ出た。磁気定期券での乗降も考えられるため尋ねると、男性は「ない。今度払う」とだけ答えて近くの量販店に消えた。

 別の無人駅ではICカードを簡易改札機にかざさずに入場した女性客が、福岡市内のターミナル駅で出場する際に実際とは異なる駅で乗車したと申告しているのを確認した。200円分をごまかしていた。

 SSS導入路線を通勤で利用する男性(56)によると、ふだん乗降する無人駅には入出場を記録する簡易改札機があるだけで、運賃を払わずに改札を出入りする人をよく見かけるという。「見過ごされているなら不公平だ」と憤る。

 鉄道営業法に基づくと、鉄道事業者は不正乗車した人に運賃の3倍以内の金額を請求できる。JR九州は抜き打ちで検札を実施。切符を持たないなど乗車記録が確認できず不正が疑われる事例は把握しているが、それに基づく徴収額は明らかにしていない。

 同社は不正乗車が一定数あることを認めた上で「不正乗車件数や被害額の全体像把握は難しい。乗客の良心に委ねるのが基本だ」と説明。幹部は「特効薬はない」と頭を抱える。

 路面電車やバスのように乗車時、車内で乗客にICカードを読み取ってもらうか整理券を取ってもらい、降車時に車内で精算する方式を採用する鉄道会社もある。だが、JR九州は複数路線があり、車両数も多いことから「コストが高く、導入は検討していない」(広報部)という。 (布谷真基)

罰金増など対応必要

 鉄道関連の法制度に詳しい小島好己弁護士の話 不正乗車の疑いがあっても係員の配置などで生じるコストより、運賃取りこぼしによる損害の方が少ないと考えるのが企業経営上、現実的になっている。一方で正規運賃を負担する利用者は不公平感を抱きやすく、モラルハザード(倫理観の欠如)を招きかねない。抜き打ちで行う検札の頻度を高めたり、不正乗車に対する請求額(罰金)を欧州のように思い切って数十倍に増やしたりして、抑止力を高める対応が必要ではないか。

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